若手編集者みゆももが初挑戦!「陶芸」って奥が深い!(前編)
目指せ、喜美ちゃん! 不器用2人組が新たな扉を開ける
取材・文:花塚水結
NHKの連続テレビ小説『スカーレット』で、主人公のモデルとなった、陶芸家の川原喜美子さん。毎朝15分、陶芸家として邁進する主人公の姿を見て、何となく「陶芸いいなぁ」と思った人も多いのではないでしょうか。
そこで、編集部の2人が陶芸体験に挑戦。陶芸を教えてくださったのは、江古田陶房の西村真一郎さん。初心者で、不器用な2人にも丁寧に教えてくださいました。前半は、陶芸の1日体験をレポートします!
教えてくれた先生
西村真一郎先生
陶芸教室江古田陶房 代表。武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科卒業。個人のレベルに合わせて、幅広いジャンルの技法を教えてくれる。江古田陶房のホームページはこちら体験した人
花塚水結(みゆ)
編集者。出勤の準備をしつつ、朝ドラをチラ見するのが日課。たまにガン見して慌てる。Twitter:@_I_eat_hotate出口夢々(もも)
編集者。美術も図工も苦手な生粋の不器用人間。Twitter:@momodeguchi
陶芸に初挑戦
花塚・出口:本日は1日、よろしくお願いします!
西村:よろしくお願いします。
花塚:前期の朝ドラは陶芸家の先生がモデルになっていましたよね。毎朝ドラマを観ているうちに、陶芸をやりたい! と思ったのですが、実際に体験するのははじめてなんです……大丈夫でしょうか?
西村:ドラマ、やっていましたね。どなたでも最初ははじめてなので大丈夫ですよ。
出口:何となく「食器類をつくるのだろうな」くらいに思っている素人なのですが……そもそも陶芸とはどんなものなんですか?
西村:そうですね、陶芸とは焼もののことですが、実用的に使える食器類のほかに、美術品としてもつくられていますよ。
日本の陶芸の歴史は、縄文時代につくられていた縄文土器が始まりだといわれています。
出口:縄文時代から歴史が続いているんですね。
花塚:朝ドラの主人公は「信楽焼」を専門にしていましたが、「信楽焼」とはどのようなものですか?
西村:陶磁器のなかの1つです。滋賀県甲賀市信楽を中心につくられていて、日本六古窯の1つにも数えられます。
出口:なるほど。古い歴史があるのですね。信楽焼はどんな特徴があるのですか?
西村:信楽焼は土味を生かした陶器です。
信楽焼に使われる土には長石や石英、それに鉄分などを多く含んでいて、高温で焼くことで長石の白色の粒が信楽焼独特の土肌を生み出してます。
それから、高温で焼くために、油分を多く含む赤松の木を薪として使用していますね。
花塚:素材が模様を生み出すんですね……。
西村:はい。それから陶器を焼くとき、「還元」という焼成方法だと、窯のなかに置く位置よっても土肌の表情が変わるんですよ。
出口:窯のなかの位置で土肌の表情が変わるんですか? すごく繊細なんですね。
西村:ドラマのなかでも出てきたと思うけど、雪でつくったかまくらのようなかたちをした、穴窯を使うんですよ。
花塚:あ、出てきました!
西村:そうそう。で、薪の炎が直接あたっていた部分は「火色」になったり、灰が陶器に降りかかれば「ビードロ釉」になったりね。
それから、燃え尽きた薪は灰となって穴窯中に積もりますから、その灰で陶器が埋まった部分は黒っぽい「窯変模様」ができたりもするんです。「焦げ」ともいっていますけど。だから、陶器の模様がどんなものになるかは「運」も含まれます。
出口:なるほど……。ひとつとして同じ作品はできないということですね。
西村:そうなんです。では早速はじめていきましょうか。
花塚・出口:はい! お願いします。
西村:2人は、何をつくりたいですか?
出口:私はコーヒーや紅茶が好きなので、カフェオレボウルを。
花塚:私は……どんぶり!
西村:なるほど。わかりました。
つくり方はいくつかあるのですが、今回は薄くスライスした粘土を型に沿わせてつくる「タタラづくり」にしましょう。
西村:では、はじめに土を練っていきます。まず、粘土を均質にする「荒練り」をしてから、粘土の空気を抜く「菊練り」をします。
菊練りは、土を楕円状にして立ててから始めます。両手で包み込むようにして、11時の方向に倒したら少し回転させて起き上げる。
花塚・出口:先生、むずかしすぎます!(笑)
西村:最初はむずかしいよね。最初にいった方法をイメージしながら、こうして練っていくと、菊のようなかたちになるんですよ。できるようになるには練習しかないですね。
花塚・出口:すごい……!やってみます。
花塚・出口:できないです……(笑)
西村:むずかしいよね。体験教室のときは時間も限られているから、私が生徒さんの代わりにやってしまうことも多くてね(笑)
花塚:(などと、喋っていてもできている……。先生すごい……)
西村:まぁ菊練りはこの辺で。
次は自分のつくりたい陶器の大きさに合わせて、土を叩いて薄く広げていきます。
カフェオレボウルは23センチくらい、どんぶりは30センチくらいかな。
出口:叩くんですね。では思い切って……
花塚:って痛い! でも、痛いけどストレス発散になります(笑)
西村:(笑)。それぞれのサイズまで広がったら、もう叩かなくていいよ。
次はこれを薄くスライスしていきます。粘土の両脇にタタラ板を敷いて、ワイヤーの切糸が浮かないように引っ張ってみて。
出口:これはすごい! 切れている感触がわかる!
花塚:硬い……! よいしょっ……と。
西村:うん、いいね。
今土の断面が糸で波打ったようになってるから、これをヘラで撫でて、滑らかにします。
出口:力加減がむずかしい……。
西村:ヘラを伏せすぎないとうまくできるよ。
出口:なるほど!
花塚:ヘラを伏せすぎず……できました!
西村:いい感じですね。では、できたら型に被せます。
ただ被せると、下のほうが傘みたいにひらひらしてるので、これをギュッと寄せていくんです。一気にやるとシワになっちゃうから、回しながら少しずつね。
花塚・出口:はい。
西村:うん、ある程度できたら、型からはみ出ている部分をカットしてください。
出口:カットするんですね……
……あっ欠けちゃった!
西村:多少は大丈夫ですよ、慌てないで(笑)
出口:はい。
西村:続いて、お皿の底部分にある高台をつける場所にインクで印をつけます。穂先を見て、脇を閉めて固定するだけ。
出口:同じ場所に筆を保つのがむずかしい……。
花塚:穂先だけを見ているつもりなのに、目線が回る粘土を追いかけてしまいます(笑)
西村:ん……まぁよしとしましょうか。次は、お皿の底の高台をつけます。
少し土を取ったら、細い棒状になるように延ばしていって、さっき赤い印をつけた部分に沿って棒状の粘土をつけていきます。粘土の真ん中をもって、押さえつけるようにね。
出口:はい。
西村:できたら、高台とお皿の接着面を撫でて境目をなくしていく。内側も外側ね。
花塚:はい。
西村:カフェオレボウルの場合は、高台に少し高さを出して、末広がりにようなかたちにしていきます。
手回しろくろを回転させて、少しずつ高さを出しながら薄くしていきます。次に手回しろくろを勢いよく回しながら、高台部分に水をつけて大体8時くらいの位置に両指を置いて整いていきます。
出口:はい。……あっ!
西村:手回しろくろが止まると歪んでしまうから、止まったらまた回して。
出口:なんとか……!
西村:そうそう。それで、末広がりの部分は指で少しづつ広げていきましょう。こんな風に摘んで。
花塚・出口:すごい!
西村:じゃあ、カフェオレボウルは乾かしていきましょう。
それで、どんぶりは高台を整えましょう。
花塚:高台ですね! わかりました。
西村:延ばしたらトースカンという道具を使って余分な部分を針で短くしますよ。手回しろくろを回しながら、ゆっくりと内側に針を差し込んでいってみて。
花塚:緊張するな……。
花塚:一気にどんぶりっぽくなった!
西村:でしょう。
出口さんはカフェオレボウルに模様をつけたいといっていましたが、どんなのがいいですか?
出口:サンプル作品にあった、線がぷっくり膨らんだ模様がいいです。
西村:イッチンですね。ケーキなどをつくるときに使うディスペンサーに、粘土の泥漿(粘性の強い液体)を入れて絞り出して模様にする技法です。
どんな模様がいいですか?
出口:そんなむずかしいことはできないので……そうですね、縦にたくさん線を引いていくとか……。
西村:縦に線を引いていくのもむずかしいんですけど、まぁやってみましょう。
線が傾かないように、何本か印をつけて、その線を見ながら引いていくと傾くことも少ないと思います。
出口:ここ最近で一番真剣に取り組んでいるかもしれない(笑)
花塚:たしかに、そんなに真剣な姿を見るのは、はじめてかもしれない……(笑)
西村:そうなんですか(笑)。もう少し真面目に働かないと上司の方に怒られますよ。
では、つくった人がわかるように、お皿の底に名前を彫りましょう。それから、最後に釉薬を選んでください。
花塚・出口:できました、先生、ありがとうございます!
体験を終えて……
昔から美術の時間やものづくりが好きだったので、陶芸もきっとできる! と意気込んで体験に臨みましたが、先生にフォローしてもらうばかりでした。でも、大きなどんぶりをつくることができたので、満足です。
私は休日によくラーメンを食べるので、できあがったどんぶりに入れて食べようと企んでいます。(みゆ)
美術も図工も技術も苦手で、とにかく手先が不器用なので終始不安でしたが、先生にかなりフォローしてもらったので、コロンとした自分の手になじむカフェオレボウルができました。
一つひとつの作業に集中して取り組むなんて仕事以外ではめったにないので、濃密な時間を過ごせました!(もも)
- 陶房情報
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お申し込みフォーム: http://www.ekodatoubou.com/contact.html
この記事に協力してくれた人special thanks
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西村真一郎
陶芸教室江古田陶房 代表。武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科卒業。個人のレベルに合わせて、幅広いジャンルの技法を教えてくれる。
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