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70代以上の女性アーティストが集結! 森美術館「アナザーエナジー展」

ZIEL編集部が紹介する、おすすめ展覧会

連載 ZIEL museum 2021.4.07

文:出口夢々

4月22日より森美術館で開催される「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」。この展覧会の見どころは、71歳から105歳までの女性アーティスト16名の作品が展示されること。50年以上ひたむきに挑戦し続けきた彼女たちの特別な力「アナザーエナジー」を感じられる展覧会です!

サムネイル:フィリダ・バーロウ《無題:キャンバスラック; 2018-2019》2018-2019年、コンクリート・キャンバス・ハードボード・塗料・プラスチック・集合材・鉄・テープ・木材、サイズ可変
Courtesy: Cross Steele Collection
展示風景:「袋小路」ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)2019年
撮影:Damian Griffiths
※参考図版

※作家の年齢は2021年4月1日時点

 

71歳から105歳の女性アーティストが集結!

 

東京都・六本木にある森美術館で2021年4月22日(木)から9月26日(日)まで開催される、「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力——世界の女性アーティスト16人」。本展では、世界各地で挑戦を続ける70代以上の女性アーティスト16人に注目し、彼女たちの活動に光をあてます

16人の年齢は71歳から105歳まで。環境や時代が変化するなか50年以上のキャリアを積み、自らの信念を貫きながら創作活動を続けてきました。絵画や映像、彫刻、大規模インスタレーション、パフォーマンスなどの多彩で力強い作品をとおして、50年以上ひたむきに挑戦し続けきた彼女たちの特別な力「アナザーエナジー」とは何かを考える展覧会です

アーティスト16人の出身地や現在の活動拠点、表現方法、生き方は、実に多様です。長い月日を生きてきた彼女たちの実践や人生から、フェミニズム、移民の歴史などといった世界の問題や事象、さらには美術史のさまざまな解釈が読み取れます。

 

◆出展アーティストのプロフィール

エテル・アドナン

 

1925年生まれ、96歳。レバノン・ベイルート出身、詩人、著述家、画家。日本文化や、他文化に大きく影響を受けた多様な作品群には、風景、抽象、色彩、文章、記憶や歴史に対する複層的な探求が伺える。

エテル・アドナン《無題》2018年、油彩・キャンバス、55×46 cm
Courtesy:Sfeir-Semler Gallery Beirut / Hamburg

 

フィリダ・バーロウ

 

1944年生まれ、77歳。イギリス・ニューカッスル・アポン・タイン出身。ロンドンを中心に活動を行う。段ボールや布、合板、コンクリートなど、安価な工業用材料を使用し、制作している。

フィリダ・バーロウ《無題:キャンバスラック; 2018-2019》2018-2019年、コンクリート・キャンバス・ハードボード・塗料・プラスチック・集合材・鉄・テープ・木材、サイズ可変
Courtesy: Cross Steele Collection
展示風景:「袋小路」ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)2019年
撮影:Damian Griffiths
※参考図版

 

アンナ・ボギギアン

 

1946年生まれ、75歳。エジプト・カイロ出身。現在は遊牧民のように世界各地に滞在し、それぞれの地域の歴史や政治、社会状況のリサーチの結果をトランスナショナルなテーマと結びつけ、相互の関係性を探っている。

アンナ・ボギギアン《空から落ちた流星》2018年
展示風景:アルテス・ムンディ8(ウェールズ、カーディフ)2019年
※参考図版

 

ミリアム・カーン

 

1949年生まれ、72歳。スイス・バーゼル出身。1970年代に興ったフェミニズムやパフォーマンス・アート、反核運動などの社会的な動向に影響を受け、アーティストとしての活動をスタートさせた。ドローイングや油彩は、差別や暴力などの社会問題、戦争、ユダヤ人女性である自身のアイデンティティと深く関わる作品を制作している。

ミリアム・カーン《美しいブルー》、2017年、油彩・キャンバス、200×195 cm
Courtesy:WAKO WORKS OF ART

 

リリ・デュジュリー

 

1941年生まれ、80歳。ベルギー・ルーセラーレ出身。沈黙、無音、不在の詩的表現が作品の主要素であり、なかでもアクション(行為)の必要条件である「静止」を重要視している。

リリ・デュジュリー《無題(均衡)》1967年、鉄、サイズ可変
展示風景:「時間の折り重なり」ミュ・ゼー(ベルギー、オーステンデ)2015年
撮影:Dirk Pauwels

 

アンナ・ベラ・ガイゲル

 

1933年生まれ、87歳。ブラジル・リオデジャネイロ出身。ブラジルの政治的混乱のなか、ポーランド系移民として西洋近代を経験したガイゲルは、制作活動を通じて、地政学的な国境やアイデンティティを再考し続けている。

アンナ・ベラ・ガイゲル《サーカ》2006年
展示風景:「サーカ」エヴァ・クラビン財団(リオ・デ・ジャネイロ)2006年
※参考図版

 

ベアトリス・ゴンザレス

 

1938年生まれ、82歳。コロンビア・ブカラマンガ出身。西洋美術史と地元の新聞から図像(イメージ)を引用し、それらを形状や平面性、カラーパレットにもとづく視覚言語を用いて変換する作品を制作している。

ベアトリス・ゴンザレス《インテリア・デコレーション》1981年、キャンバスにスクリーンプリント、269 × 1958 cm
撮影:Mathias Voelzke
※参考図版

 

カルメン・ヘレラ

 

1915年生まれ、105歳。キューバ・ハバナ出身。米国における幾何学抽象表現の先駆者のひとり。1950~60年代に見られたコンセプチュアル・アートの流れのなか、彫刻の新しい表現を探求。ヘレラの作品には共通して、動向として受容されるイズム(主義)をはるかに超えた人間性への探求が伺える。

カルメン・ヘレラ《赤い直角》2017-2018年、塗料・アルミニウム、109.7×153.7×26.4 cm
Courtesy:Lisson Gallery

 

キム・スンギ

 

1946年生まれ、75歳。韓国・扶餘(プヨ)出身。仏教や道教などの東洋思想と、ヴィトゲンシュタインの言語論に影響を受けた作品をつくる。作品には、時間や言語、生と芸術への本質的な問いが通底している。

キム・スンギ《プラスティークな状況III—10月のボルドー》1973年、ビデオ、13分45秒
※参考図版

 

スザンヌ・レイシー

 

1945年生まれ、76歳。アメリカ・カルフォルニア州ワスコ出身。アーティストが対話や討論、コミュニティへの参加や協同といった実践を行うことで、社会的価値観の変革を促す活動「ソーシャリー・エンゲージド・アート」の先駆者である。教育者、著述家としても活躍。女性解放運動や人種差別、高齢化、暴力などの社会的課題や都市の問題に取り組んできた。

スザンヌ・レイシー《丸と四角》2015-2017年、2年にわたるプロジェクト、3日間のパフォーマンス、ビデオ・インスタレーション
撮影:Graham Kay
※参考図版

 

三島喜美代

 

1932年生まれ、89歳。大阪府出身。950年代後半から、印刷物や廃品を用いたコラージュ、油彩など、実験的な平面作品を発表し注目される1973年以降、陶にシルクスクリーンで印刷を施す立体作品を制作。使い捨てることができない陶に写された新聞紙や空き缶という、表面と素材の違和感には、当時注目された大量消費社会や情報化社会への批判が込められている。

三島喜美代 《作品 19-C5》2019年、シルクスクリーン印刷した陶に手彩色・鉄、サイズ可変
Courtesy:Taka Ishii Gallery

 

宮本和子

 

1942年生まれ、79歳。東京都出身、ニューヨーク在住。ミニマリズムを日本的視点から考察する作品で知られる。他民族都市のニューヨークで自らのアイデンティティを問い、女性アーティストによって1972年に設立されたA.I.R.(Artists In Residence)ギャラリーの活動にも積極的に参加している。

宮本和子《黒い芥子》1979年、黒い糸・釘、274×183×213 cm
Courtesy: Exile, Vienna, and Take Ninagawa, Tokyo
展示風景:A.I.R.ギャラリー(ニューヨーク)1979年

 

センガ・ネングディ

 

1943年生まれ、78歳。アメリカ・シカゴ出身。彫刻、パフォーマンス、ダンスを融合した作品を制作している。1960年代、日本文化を経験し、具体美術協会について学ぶため、早稲田大学に1年間留学。以降、日本の歌舞伎や舞踏、また西アフリカの儀式の視覚表現が作品において重要な役割を果たす。

センガ・ネングディ《R.S.V.P.のスタジオでのパフォーマンス》1976年、ゼラチン・シルバー・プリント
Courtesy:Sprüth Magers and Thomas Erben Gallery
※参考図版

 

ヌヌンWS

 

1948年生まれ、73歳。インドネシア・ラワン出身。偶像崇拝を禁じるイスラム教の伝統を反映し、幾何学的抽象画に初期から取り組む。

ヌヌンWS《Dimensi Tenun(寸法を織る) #1 》、2019年アクリル絵具・キャンバス、425×180 cm(5点組)

 

アルピタ・シン

 

1937年生まれ、84歳。インド・バラナガル出身。抽象と具象、絵画的イメージと数字や文字が渾然一体となった画面へと発展するが、そこには広告看板やテレビ、新聞などから日常的に吸収される世界の断片が描かれている。

アルピタ・シン《私のロリポップ・シティ:双子の出現》2005年、油彩・キャンバス、152.4×213.3 cm
所蔵:ヴァデラ・アート・ギャラリー(ニューデリー)

 

ロビン・ホワイト

 

1946年生まれ、75歳。ニュージーランド・テ・プケ出身。1972年ごろまでには、輪郭線を強調する絵画でニュージーランドの地域主義者のひとりになる。島での伝統的な共同制作を通してアートの概念を拡張し、近年ではキリバス、フィジー共和国、トンガ王国などの女性たちと積極的に作品を制作している。

ロビン・ホワイト+ルハ・フィフィタ(共同制作)《大通り沿いに目にしたもの》(「真っ直ぐな道 2013-16」シリーズより)2015-2016年、顔料・草木染をしたバーククロス、2400×380 cm
展示風景:「大通り沿いに目にしたもの」ビクトリア国立美術館(メルボルン)2016年
撮影:Michael Fudakowski

 

展覧会情報
アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人

会場:森美術館
会期:2021年4月22日(木)〜2022年1月16日(日)
   4月25日(日)から5月11日(火)まで臨時休館
観覧料:平日 一般2000円(65歳以上1700円)、土・日・休日 一般2200円(65歳以上1900円)ほか
開館時間:10:00〜22:00(入館は閉館の30分前まで)※
休館日:会期中無休
最寄り駅:六本木駅、麻布十番駅、乃木坂駅
HP: www.mori.art.museum
※事前予約可
※火曜日のみ17:00まで(5月4日は除く)

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