監修者
長山 浩之
- 行政書士
特定社会保険労務士
1970年大阪府吹田市生まれ。東京情報大学卒業後、某大手スーパーに就職。その後、某テーマパークへ転職。31歳で一念発起し、某テーマパークを退職し、司法試験受験を開始する。2012年に国立九州大学法科大学院を卒業後、新司法試験を受験するも不合格。他士業への転換を決意する。同年行書士試験合格。2014年社会保険労務士試験合格。2015年行政書士長山オフィス開業。開業当初から遺言・相続専門行政書士として千葉県内を中心に数多くの遺言書原案・遺産分割協議書・任意後見契約書作成を手掛ける。また認知症の方の成年後見人も務めており、高齢者の頼れるサポーターとして活動している。行政書士 労働相談長山オフィスのホームページはこちら
遺言書には付言まで記してトラブルを防ぐ
行政書士として終活世代のみなさんにお願いしたいのが、遺言書の作成です。
「遺言書を書くと死期が近づくような気がする……」と、書くのを敬遠する方も多いですが、遺言書がないと遺された人が困ってしまいます。相続できる財産を把握できなかったり、財産を把握できたものの分割の割合で揉めたりと、遺言書がないとトラブルが起こりやすくなるので、必ず作成するようにしましょう。
とはいっても、書くタイミングをなかなか見つけられないと思います。ですので、健康診断で身体の不調が見つかったときや、友人が亡くなったときなど、「もしもの場合に備えたほうがよいかも」と感じたときに書いてみてはどうでしょうか。
遺言書には、財産の分け方を記すのですが、そのときに一緒に書いておきたいのが「付言」です。付言とは、遺言書に記す遺された人へのメッセージのこと。付言を書いておくことで、相続時のトラブルを防げます。
たとえば、相続財産が家と土地、現金で、相続人が長男と次男の2人の場合だったとしましょう。長男には家と土地を、次男には現金を相続させたいのであれば、その旨を遺言書に記します。ですが、それだけだと、次男が「なぜ家と土地を長男が相続するのか!」と、財産の分割方法に納得しないこともあるでしょう。そこで役立つのが、付言です。
付言として、「長男は最期まで同居してくれていたから家と土地を相続させたい」と、分割方法の理由まで書くのです。すると、被相続人の遺志が見えるため、相続人たちが納得しやすくなり、トラブルに発展しにくくなります。
また、遺言書の内容を実現させるために諸々の手続きを行う遺言執行者を遺言書に記しておくと遺された人たちがスムーズに手続きを行えます。死後の手続きは平日に役場や年金事務所に行く必要があるので、かなり手間と時間がかかるもの。ですので、遺言執行者と相続人代表に任命した人には、相続財産の割合を多くして、その手間を労わるようにしましょう。
ちなみに、とりわけ遺言書を書いておくべき人は、独身の方、もしくは結婚はしているが子どものいない方です。そういった方が亡くなると、遠縁の親戚などが相続人の対象となり、相続人の数が7~8人と多くなってしまう場合があります。
また、普段関わりのなかった人の財産を相続するために相続人になり、手続きが発生するのも、遺された人としては困った状況になりかねません。なので、とりわけお世話になっていた親戚へ財産を譲り渡す、もしくは財産をすべて市区町村に寄付すると指定した内容を記した遺言書を作成しておくと後々のトラブルを防げるでしょう。
なお、遺言書に不備があると、自分の死後に法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要性が出てくるので、不備のない遺言書を作成するために、行政書士や弁護士などに依頼するのがおすすめです。また、当オフィスで遺言書の作成を依頼していただいた際に、一緒におすすめしているのが任意後見契約書の作成です。
任意後見契約で認知症になったあとの暮らしも安心
任意後見契約とは、認知症などでお金の管理や契約などの法律行為ができなくなったときに備えて、自分に判断能力があるうちに後見人を指名しておく契約のこと。認知症になったことが銀行などの金融機関に知られると、口座は凍結され、利用できなくなってしまいます。その口座をふたたび利用できるようにするには、後見人を立て、手続きをしなければなりません。ですので、認知症などで自分の意思表示ができなくなる前に、信頼できる人を自分で後見人に指定し、契約を結んでおくとよいのです。
もちろん、後見人は認知症になったあとでも立てられます。これを法定後見といいます。ですが、この場合、後見人になる人は家庭裁判所が決めるため、弁護士や司法書士、行政書士などの士業の人や、本人が望まない第三者が後見人に指定される可能性があります。自分のことをよく知っている人に金銭の管理をお願いしたいのであれば、任意後見契約を結んでおく必要があるのです。
任意後見契約を結ぶためには、任意後見契約の内容を決め、本人と任意後見人になってもらいたい人が一緒に公証役場に行き、公正証書を作成します。そのときに任意後見契約書が必要となるので、当オフィスではその契約書の作成をしています。
金銭が絡むと人は揉める
死後の手続きは、亡くなった方に課せられる行為ではなく、遺された人が必ず行わなければならない行為です。だからといって、「財産の処分も分け方も好きにしていいよ」などと投げやりにせずに、遺される人の気持ちや状況をきちんと考え、遺言書やエンディングノートなどのかたちに残すことが大切です。
よく「うちは子どもたちの仲がよく、揉めることはない」とおっしゃる方もいますが、金銭が絡むと人間は揉めるもの。ですので、遺される人のために自分の意思をはっきりと示してほしいのです。
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