監修者
角田 壮平
- 税理士
行政書士
世界4大会計事務所のEY税理士法人では、年商数十億、数百億円規模の会社経営者の相続対策に関与し、前職の税理士法人チェスターでは、300件を超える相続税申告案件に携わりながら法人の専務役員として人材教育や組織マネジメントにも従事していた。税理士法人トゥモローズを設立後は、毎年100件を超える相続税申告、相続対策に取り組んでいる。税理士法人トゥモローズのホームページはこちら
争族を防ぐには生前の準備が必要不可欠
「争族」という言葉もあるくらい、相続においては争い事が珍しくありません。
私が担当してきて一番揉めたのは、被相続人が母親、相続人が長男と次男の事例です。このときは次男の税理士を担当していました。
母親と長男は長年一緒に住んでいて、母親が亡くなったときの相続財産が数百万円だったのですが、次男が「長男が母親の財産を使い込んでいるから財産はもっとあるはずだ」と主張したのです。同居していた長男が財産を使い込んだという証拠はありませんでしたが、次男は自ら預金調査なども行っていました。
次男の一番の目的は税務調査をしてもらって、長男が財産を使い込んでいる証拠を掴みたいとのことだったので、次男の意向を踏まえて、また当社でも預金異動調査をした結果、不明出金の一部である5000万円を長男への預け金として相続財産を計上し、相続税の申告をしました。
長男も長男で税理士を立てていたので、そちらのほうでも相続税の申告をしたわけですが、多分長男への預け金は相続財産に計上されていなかったのではないでしょうか。ひとつの相続に対して課税価格が異なる申告が2つ出ることはあり得ませんので、次男は税務調査が入るだろうという見通しを立てていたのです。
しかし、結局税務調査に入られることはなく、次男が折れて、預け金の5000万円はありませんでした、という更正の請求を出しました。更正の請求をすると一般的には税務調査が入るのですが、国税庁側も兄弟の争い事だろうとみなして、調査に入らなかったのだと思います。
次男の思惑通りにはなりませんでしたが、きっと長男に対してお金以外で何か思いがあったのだと思います。兄弟の歴史のなかで生活の不一致みたいなことが蓄積されて、母親の死とともに顕在化したのではないかと。
自分が亡くなった後に家族が争うのも嫌ですよね。ですから、財産がどれくらいあるのか、どこに置いてあるのか、ということを家族に伝えておくことは大事だと思います。
相続の対策には争族対策、納税対策、節税対策の3つがありますが、一番は争族対策を前提にしたほうがよいでしょう。
上記の事例のように、家族同士がいがみ合って連絡を取らなくなってしまうようでは悲しいですよね。なので、生前に準備をしておくことをおすすめしています。具体的には、遺言書を残しておくとよいです。
遺言書には、家族へのメッセージを残せる「付言事項」があります。ここには遺言者が自由に思いを書けるので、それぞれの相続人に納得感を与えることができるのではないかと思います。また、遺言書を作成する場合は、公証人が作成を行ってくれる公正証書遺言が安心安全でしょう。
相続対策は大切な家族のために行う
相続税の申告を税理士に依頼している方は全体の85%ほどで、残りの15%は相続人自ら申告しています。統計は出ていていませんが、自ら申告する15%の人のほうが、税務調査に入られる割合はかなり高いと思います。確かに税理士に依頼をすると費用がかかってしまいますが、税務調査に入られる確率を低くするメリットは大きいでしょう。
また、相続税の申告は一生に1〜2度の事柄だと思いますので、申告者自身に知識やノウハウはありませんよね。こうした意味でも、税理士に依頼するのがよいと思います。
当社では相続のアフターフォローも行っています。相続した財産の運用方法や、不動産の活用方法などを知りたいという方に対して、金融資産を運用するプロやファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家を紹介していて、サービスを利用されるお客さまも多いですね。
相続というと、死を連想させるので、なかなか前向きに向き合う方が少ないです。僕自身も残された妻や子どものために考えなければいけないのですが、日々の生活に追われて手付かずになってしまいます。
ただ、どこかでやらなければいけないのです。自分のためではなく、残される家族を思い浮かべれば、行動できるのではないでしょうか。
相続専門のプロならではのサービスを提供する
そもそも相続の「相」は、元々「姿」の意味をもちます。これは視覚的なありさまを表す「姿」はもちろん、内面的な思考や気持ちも含まれています。この「姿」を続けていくのが「相続」になります。私たちの仕事は、できるだけスムーズに、かつ次の世代が幸せになれるバトンタッチのお手伝いすることを日々考えています。
当社では全体の9割が相続に関する業務です。そのため、被相続人が亡くなった後の相続税申告を代行して行う業務がほとんどですが、ときどき、被相続人が亡くなる前に相続税対策の依頼を受けるケースもあります。
相続税は生前にしっかりと対策をすれば節税効果が高まるので、お客さまからのニーズも多いです。節税の依頼に関しては、お客さまに合わせた節税方法をご提案しています。
当社では相続税申告に関する初回のご面談の際に、「相続税申告において税理士に求めるものは何ですか?」というアンケートを実施しています。そこで一番多いのが、税務調査に入られたくないことと、相続税の節税の2つです。
相続税申告に関して税理士だけに認められている制度として、書面添付制度があります。簡単にいうと、申告内容の保証書みたいなものです。
一般的に、税理士に申告書の作成を依頼すると委任状がつけられ、税理士が申告を行ったという証明書になるのですが、書面添付は、税理士が行ったという証明に加えて、申告内容がより適切であると保証されます。
したがって、書面添付がある申告書は税務調査に入られる割合が1/10程度に軽減され、仮に申告内容が誤っていたとしても税務調査の前段階である意見聴取の段階で修正をすればペナルティが課されないという、2つの大きなメリットが得られます。
当社で依頼を受けた案件については、ほぼ100%書面添付を行っており、やはりこれまでの実績やノウハウがあるからこそ当社にできることだと思います。書面添付をつけることによって、税理士に支払う報酬が当社の場合には5万円上乗せされてしまいますが、報酬を支払ってでも大きなメリットを得ることには意味があるでしょう。
ただ、書面添付を行っている税理士や税理士法人は全体の20%程度だと思います。なぜなら、税理士にとって書面添付は諸刃の剣だからです。
書面添付は申告内容を保証するものなので、申告内容に仮想隠蔽などの事実と異なる場合には税理士が懲戒処分を受けるなどのリスクがあります。そのため、相続税を専門としていない税理士の場合、書面添付を行う割合が低くなるのでしょう。
相続税の節税は、さまざまな節税テクニックを駆使することに限ります。当社が担当している案件は9割が相続税に関する依頼なので、これまでのノウハウが蓄積されています。こうしたノウハウはすべて社内フローに反映させているので、他社と比較しても相続税に関する解決策をたくさんもっていると思います。
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