故人が、人生で一番綺麗な姿で旅立つためのお手伝い『おくりびと』
「穢らわしい職業」のイメージを一新
文:花塚水結
編集部・花塚が、今観たい映画作品を紹介する新連載「気になるシーンをコマ送り スクリーンZIEL」が始まりました!
この連載では、新しく公開される映画から、動画配信サービスで配信が始まる作品を、実際に花塚が鑑賞し、気になるシーンをピックアップしながらご紹介します。
第1回目は、2008年に公開された『おくりびと』。
思いがけず、ご遺体を棺に納める納棺師になってしまった小林大悟(本木雅弘)が、納棺師として成長していく物語です。
2020年10月30日(金)よりNetflixで配信が開始となったので、さっそく花塚が鑑賞しました!
『おくりびと』のあらすじ
「旅のお手伝い」という求人広告を見た大悟が納棺師になる
チェロ奏者から納棺師になった主人公・小林大悟。念願だったプロのチェロ奏者になった大悟は、あるとき突然楽団が解散となり、路頭に迷います。悩んだ末、「地元の山形に帰りたい」と妻の美香(広末涼子)に話すと、賛成してくれ、2人は山形で暮らすことになりました。
地元で新たな仕事を探していた大悟は、偶然新聞に掲載されていた好条件の求人を目にします。
「旅のお手伝い」「未経験募集」の文言に、旅行代理店だと思い込み、面接を受けることに。会社に行ってみると、ご遺体を棺に納める納棺業者だったのです。
葛藤を抱えながら、やがて「棺桶師」の仕事に誇りを持つ
社長の佐々木(山﨑努)に即決で採用され、納棺師としての道を歩むことになった大悟。しかし、敬遠されがちな職業であることから、美香にも地元の同級生である山下(杉本哲太)にも仕事内容を言えず、葛藤する日々を過ごします。
そんなある日、大悟の仕事が地元で噂になり、山下に距離を置かれてしまいます。また、美香にも仕事がバレてしまい、「そんな仕事は辞めてほしい」と言われ、妻が出て行ってしまいます。
それでも、佐々木の仕事ぶりや、たくさんのお別れを通して「納棺師」という職業に誇りを持ち、仕事に奮闘する大悟。美香にも山下にも見放されてしまった大悟は、どのような決断をするのでしょうか。
このシーンが気になった!
大悟がはじめて遺族の前で納棺の儀式を行う、佐々木の仕事を見学するシーン。
佐々木は、祭壇に飾られている遺影をじっと見つめたあと、亡くなった女性のご遺体へ丁寧に触れ、処置を施していきます。そうして、遺影の女性がつけている口紅を遺族から借り、女性のご遺体へ塗ってあげるのです。
このシーンで、納棺師がご遺体への処置を機械的に行う仕事ではなく、いかに愛情を込めて旅立ちのお手伝いする仕事であるかを知ることができました。
故人がその人らしく、そして、今までの人生で一番綺麗な姿で旅立てるようお手伝いをする納棺師の姿が、とても美しかったです。
本作では、自宅でお葬式を執り行う、昔ながらの形式でお葬式が行われていました。祭壇に向かい合っている遺族たちの前にはご遺体。ご遺体を挟んで、祭壇に背を向けるかたちで納棺師が座り、遺族と向かい合います。
納棺師は遺族が見守る前でご遺体に処置を施すのですが、とても緊張感のある空間だということが、画面越しに伝わってきました。ご遺体が着ている死装束が擦れる音や、髪をとかす音——。それらが聞こえてくるなかで厳かに、かつ愛情をもって行われる、故人を送り出すための準備。尊敬の念を抱いてしまいます。
また、「死」がテーマとなると、どうしても重苦しい作品のようなイメージを抱いてしまいますが、つい笑ってしまうシーンが散りばめられているので、気持ちが重くなることなく、観ることができました。
『おくりびと』を鑑賞する際は、くすりと笑ってしまうシーンにも注目してほしいなと思います。
映画公開当時にご覧になったことがある方や、配信で観た方はぜひコメントで感想を教えてください!
『おくりびと』(2008年)
監督:滝田洋二郎
脚本:小山薫堂
出演者:本木雅弘、広末涼子、吉行和子、山﨑努、杉本哲太ほか
配信しているサイト:Netflix、TBSオンデマンド、TSUTAYA TV、Amazon prime videoなど
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