秋の夜や旅の男の針仕事——一茶はどんな情景を詠んだのか
さびしい男を詠んだ一茶の句
文・書:花塚水結
季節にあった季語を用いた俳句を紹介する連載「魂の俳句」。
第11回目は、「秋の夜や旅の男の針仕事」(小林一茶)。季語や意味、どんな情景が詠まれた句なのか、一緒に勉強していきましょう!
そして、その俳句を題材にして、大学で書道を学んでいた花塚がかな作品(日本のかな文字を用いて書かれる書道のこと)を書きますので、そちらもお楽しみに!
四国行脚の最中に一茶が詠んだ句
俳句:秋の夜や旅の男の針仕事(あきのよやたびのおとこのはりしごと)
作者:小林一茶(1763-1828)
出典:寛政句帖、一茶俳句集など
季語:秋の夜(秋)
意味:一人旅をしている秋の夜。慣れない針仕事をするさびしい男
季語は「秋の夜」で、季節は秋。
意味は「一人旅をしている秋の夜。慣れない針仕事をするさびしい男」。
この句は、1793(寛政5)年、一茶が31歳のときの作品です。1792年の春、亡き師匠の俳人・二六庵竹阿(にろくあんちくあ)の足跡をたどるため、四国行脚へ出かけます。この旅は「二六庵」の継承を目的とした俳諧修行で、各地にいた竹阿の弟子や知人の元を訪れるのでした。その旅の途中、愛媛県松山市の三津浜で詠まれた句です。
“お裁縫男子” は素敵である
さてこの句、「針仕事をするさびしい自分」の姿を詠んでいるわけですが、この句が詠まれた年、一茶はまだ結婚前でした。当時、針仕事と言えば、女性の仕事という考えが主流でしたから、「自分のことをやってくれる相手もいない」という一茶の切ない思いが、「秋の夜」に反映されているのではないでしょうか。
だが、しかし、でもですよ。お裁縫する男子って、めちゃくちゃよくないですか???
きっと、旅の途中で服の裾が擦れてしまったのでしょう。現代のように手軽に服が手に入るわけではありませんし、何日もかかる旅の途中ですから、おそらく自由に使えるお金も少なかったと思います。そもそも、簡単にものを捨てる時代でもなかったはずです。
当時は破れた服を修復するのはあたり前だったのかもしれませんが、それでも “お裁縫男子” は健気すぎるでしょ!!!
「さびしい男」と表現する気持ちはわからなくもありません。でも、時代は流れ、男女差をなくそうと努力している今、針仕事をする一茶とこの句に対しては、また違った解釈ができるなぁと思いました。
みなさんはどのように考えましたか? ぜひコメント欄で教えてください。
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