ルーヴル美術館の有名作品を紹介【ドゥノン翼】|おうちで鑑賞したい名作7選
オンラインで所蔵全48万点を公開中
文:出口夢々
「モナ・リザ」や「ミロのヴィーナス」など世界的に有名な作品を数多く展示する、フランス・パリにある「ルーヴル美術館」。いつかは行ってみたい、と思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな方に朗報です! 新型コロナウイルスの蔓延に伴い、ルーヴル美術館は館内で公開されている作品およびランス北部の保存施設に所蔵されているすべての作品にあたる約48万2000点をオンラインで公開しています!
オンラインで公開中の作品は、上記の「COLLECTION」でご覧いただけます。使い方は簡単。サイトを開いたら表示される「Seach the collections」に見たい作品名や画家の名前を入れるだけ。ただし、残念ながら、サイトは英語とフランス語にしか対応していないんです……。
というわけで、英語は苦手で……という方も作品を堪能できるように、本記事では、ルーヴル美術館でぜひ見ておきたい有名作品を紹介していきます! 作品名と作者名を英語でも表記するので、気になった作品は「COLLECTIONS」で細部まで鑑賞してみてください。
本記事では、ルーヴル美術館のドゥノン翼に展示されている作品を紹介します。
▼レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」
イタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた作品です。「世界でもっとも知られた、もっとも見られた、もっとも描かれた、もっとも歌われた、もっともパロディ作品がつくられた美術品」と言われています。
16世紀を代表する芸術家ジョルジョ・ヴァザーリは、ダヴィンチをルネサンス最大の画家とし、モナリザは彼の最高傑作だと評価しています。そんなモナリザがこれほどまで有名になったのは、1911年にルーヴル美術館から盗まれたから。この事件が世間で有名になり、一度盗まれたことのある絵画だとして、モナリザの名が世界中に知れ渡るようになりました。
また、モナリザには数多くの謎が残されていることも、私たちを惹きつけるのかもしれません。モナリザのモデルが明確にはわかっていないこと、描かれている女性の顔が左右で異なること、瞳のなかにダヴィンチのイニシャルだと思われる「LV」という文字が描かれていること——。ぜひ、この謎を1つ1つ確認してみてください!
作品データ
作品名:Portrait de Lisa Gherardini, épouse de Francesco del Giocondo, dit La Joconde ou Monna Lisa
作者名:Léonard de Vinci
製作年:1503-1519年
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010062370
▼パオロ・ヴェロネーゼ「カナの婚礼」
イタリアの画家パオロ・ヴェロネーゼが描いた作品です。1562年6月6日、ヴェロネーゼはヴェネツィアのサン・ジョルジオ・マジョーレ島にあるベネディクト派修道院の食堂の壁に、絵を描くことが決まりました。その壁に、横幅10メートル近くにわたって描かれたのが「カナの婚礼」です。
と、ここでみなさんにクイズです!
10メートルもある作品を、どのようにしてヴェネツィアからパリに運んだと思いますか?
当時はトラックなどありませんでしたから、10メートルとなるとなかなかむずかしそうです。
正解は、「いくつかに切り離して運んだ」でした!
絵を切るだなんて言語道断だと思いますが、ナポレオンがそのような指示を出して、パリへ持ち出されたのだとか。編集部・出口は実際にルーヴル美術館でこの作品を見たことがあるのですが、切れ目なんて全然わかりませんでした。修復技術ってすごいですね……。
ちなみに、本作のテーマは、ヨハネの福音書に残されたエピソードである、イエス・キリストが「水をワインに変える」という奇跡を行った話です。絵の中央で、真っ直ぐとこちらを見据えているのがイエス・キリスト。真摯な視線に心奪われる作品です。
作品情報
作品名:Les Noces de Cana
作者名:Paolo Caliari
製作年:1562-1563年
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010064382
▼「サモトラケのニケ」
ギリシア神話に登場する、勝利の女神・ニケの彫像です。1863年にエーゲ海の「サモトラケ島」で発掘され、ルーヴル美術館で修復されたのちに展示されました。
ニケは翼のある女神像として表されることが多く、「サモトラケのニケ」も大きな美しい翼が特徴。このニケ像は神殿に奉納されたもので、サモトラケ島に暮らす当時の人々は、島の神々に祈ることで海の事故を避け、戦いでは勝利を得ることができると信じていたと言われています。
ちなみに、スポーツ用品メーカーのNIKEは「ニケ」が由来だということをご存知でしたか? 社名はもちろんのこと、あの有名なロゴのマークもニケの翼がモチーフになっています。
作品情報
作品名:Victoire de Samothrace
作者:不明
製作年:不明
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010252531
▼ジャック=ルイ・ダヴィッド「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」
フランスの画家ジャック=ルイ・ダヴィッドが描いた作品です。ダヴィッドはナポレオンの首席画家を務め、ナポレオンにまつわるさまざまな作品を描きました。
本作で描かれている戴冠式は、教皇ピウス7世出席のもと、パリのノートル=ダム大聖堂で盛大に行われました。冠を授けるという行為は、通常は位の高い者から低い者に対して行われます。ですので、ナポレオンがローマまで赴き、教皇に冠を授けてもらうのが本来のあるべき姿。しかし、ナポレオンは教皇をパリまで呼び寄せたうえに、教皇から冠を授かるのではなく、自分自身で自分の頭の上に冠をおいたと言われています。
ですが、絵をよく見てみてください。画面の中央右で冠を持っているのがナポレオンなのですが、手にしている冠を跪いている女性に授けようとしていますよね。あれ、史実と異なる? と思った、そこのあなた。正解です。「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」は史実通りに描かれた作品ではないのです!
というのも、ダヴィッドは最初、自分で冠をかぶるナポレオンを描いたそうなのですが、その姿はあまりにも挑戦的で暴君のようなイメージを民衆に与えると判断しました。絵画作品は後世まで残るものなので、事実通りに描くことよりも、ナポレオンのイメージを守ることを優先したのです。
ナポレオンに尽くしたダヴィッドですが、ナポレオンの失脚後は亡命を余儀なくされ、生まれ育ったフランスを離れ、ベルギーで亡くなりました。
作品情報
作品名:Sacre de l’empereur Napoléon 1er et couronnement de l’impératrice Joséphine dans la cathédrale Notre-Dame de Paris, le 2 décembre 1804.
作者名:David, Jacques-Louis
製作年:1806-1807年
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010065720
▼ドミニク・アングル「グランド・オダリスク」
フランスの画家ドミニク・アングルが、ナポレオンの妹であるナポリの王妃カロリーヌの依頼によって描いた作品です。ちなみにアングルは、「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」を描いたジャック=ルイ・ダヴィッドの弟子です。
画面いっぱいに描かれたこの女性、エキゾチックな雰囲気に魅了されますが、どこか違和感を覚えませんか?
そう、この女性、身体が非現実的なまでに歪んでいるのです。どこか猫を思わせるようなこの身体は、アングルが人間のかたちを極限まで理想化させて描いたもの。1819年にサロンでこの絵を発表した際には、批評家から「このように劇的で捻った姿勢には、もう2、3本の背骨が必要である」と言われたのだとか。
よく見ると、女性の左足もかなり不自然な場所に置かれていますよね。美しさのなかにある不気味さや奇妙さが人々の視線を惹きつける作品なのです。
作品情報
作品名:La grande odalisque
作者名:Ingres, Jean-Auguste-Dominique
製作年:1814年
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010065566
▼テオドール・ジェリコー「メデューズ号の筏」
フランスの画家テオドール・ジェリコーが描いた作品です。1816年にアフリカ西海岸でフランス海軍のメデューズ号が難破した事件が題材になっています。
このメデューズ号は、パリ条約に従い、イギリスからセネガル返還を受けるためにセネガルへ向かっていました。艦長に任命されたのは、ユーグ・デュロワ・ド・ショマレー子爵。この子爵、なんと20年以上も出航の経験がなかったのにもかかわらず、政治的な昇進の結果、艦長に任命されました。
その結果が、難破です。子爵の能力不足が原因で座礁。乗客や乗務員は護衛艦のボートに乗り移り、13日間に渡って漂流を続けました。400名もの人を連れてフランスから出発しましたが、生き残ったのはわずか15人。嵐や飢餓、発狂、自殺によって乗員が減っていきました。そしてなんと、生存者は死者の肉を食べて命をつないでいました。
この絵画に描かれているのは、ボートの乗組員がはるか彼方に船を発見した瞬間。画面の右手奥に小さな船が描かれていますが(本当に、かすかに見えるだけです。拡大して見てみてください!)、その船が生き残った人々を救うことになるのです。極限の状況下で突如現れた生への望みを描いた作品です。
作品情報
作品名:Le radeau de la Méduse
作者名:Géricault, Théodore
製作年:1818-1819年
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010059199
▼ウジェーヌ・ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
フランスの画家で、ロマン主義の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワが描いた作品です。フランス・パリの7月革命直後に描かれ、画面の中央で民衆を先導する自由の女神が掲げた三色旗は、現在のフランス国旗の起源になったと言われています。
ちなみに、左手に銃剣つきマスケット銃を持ち、右手に旗を掲げている女性「マリアンヌ」は実在する人物ではありません!!「自由」を擬人化した存在なのです。彼女は今でもフランスを象徴する人物で、本作はフランス人がもっとも愛し、誇りとする絵画の一枚だと言われています。
作品情報
作品名:La Liberté guidant le peuple(28 juillet 1830)
作者名:Delacroix, Eugène
製作年:1830年
URL:https://collections.louvre.fr/en/ark:/53355/cl010065872
いつ行っても混雑しているルーヴル美術館。「モナ・リザ」の前も、「サモトラケのニケ」の前も、「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」の前も人だかりができていて、近くで鑑賞しようとしても揉みくちゃにされる……なんてことが多々あるので、オンラインで見られるのはすごく楽ですし、落ち着いて見られるからこそ新たな発見ができるかもしれません。
シュリー翼編とリシュリュー翼編も近日中に公開予定。次回も、名画・名作をたくさん紹介していきます!
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