コスチュームジュエリーデザイナー・浅井美恵子の「輝き方」
68歳——“ものをつくる”ことの楽しさを噛みしめて
取材・文:花塚水結
「私は何でも興味が湧くと、とりあえずトライしてみます。おもしろければ続けられますよね!」
小さいころからキラキラしたものが好きで、大学では造形を学び、現在にいたるまでたくさんの制作活動をしてきた浅井美恵子さん。2020年のコスチュームジュエリーアワードでは佳作に選ばれるなど、輝かしい活躍をしています。そんな、浅井さんが輝くためのアイテムや1日の過ごし方をご紹介します。
自分の作品を毎日身につけ、実用に沿った作品づくりを行う
——今の生活の中心になっているものとは、どんなことですか?
浅井:コスチュームジュエリーや吹きガラス、ファブリックステンシル……と、毎日違うことに取り組んでいて、何が中心かと聞かれるとむずかしくて(笑)
——たくさんのことに取り組まれているのですね。共通しているのは何かをつくっていることでしょうか。
浅井:そうですね。何かをつくっていることが多いです。
今日、取材のためにきていただいたこのギャラリー美恵夢のオーナー業をしているんですけど、普段はレンタルスペースとして貸し出しもしています。定期的にコスチュームジュエリー、ファブリックステンシル、アロマの先生がいらっしゃるので、私も参加しています。何もないときはアトリエとして使っていて、ここで何かしらの制作していますね。
——先日アップさせていただいた「輝く女性を美しく彩る——『春色のシンフォニー展』」では、制作されたコスチュームジュエリーを観に行かせていただきました。丁度、後ろのほうにも飾っていますね。
浅井:ありがとうございます。日本でのコスチュームジュエリー研究の第一人者である渡辺マリ先生のゼミに通って、もう7年くらい経ちます。普段は3カ月に1回、渡辺先生がこのアトリエに来てくれるので、私たちゼミ生も作品を持ち寄って集まるんです。
実際にモデルが着用して、デザインのポイントやネックレスの長さや装着した時のバランスがどうとか、細かくアドバイスをいただいています。次は7月に集まるんですけど、それまでにブローチの課題が出ているので、デザインをどんな感じにしようかな、と考えているところです。
浅井:今はこんなご時世なので、アトリエに来られない方でもゼミを受けられるように、ZOOMもつなぎながら行っています。
——なるほど。こうして日々制作されている作品を展示会などに出展するのですね。
浅井:そうですね。加えて、展示会用の制作も進めていく、という感じです。
あとは、コンテストに出品することもあります。2020年のコスチュームジュエリーアワードでは佳作をいただきました。花嫁さんが着る色打掛けに合わせることを想定して、和装の華やかさや煌びやか一層演出できるように制作しました。
——すごいですね! こうした作品のインスピレーションは、どのように生まれるんですか?
浅井:この作品は、中国時代劇に出てくる皇后様や皇女様がつけていた髪飾りにヒントをもらいました。動画配信サービスで中国時代劇を観るのが好きなんですけど、昔の中国の皇族たちって、ものすごく豪華な宮廷服を着ていて、それに負けないインパクトのある髪飾りをしているなと気づいたんです。画面を写真に撮って、制作の参考にしました。
後は、美術やデザインの本も参考にしますよ。展覧会に行くこともあるので、そこで図録を買ったり、和柄の本を買ってみたり。写真を眺めながら、イメージを膨らませていきます。
——今日も素敵なコスチュームジュエリーをつけていらっしゃいますが、毎日つけているのでしょうか?
浅井:そうです、毎日つけています。二重にしたり、ロングにしたりして使うこともできます。コスチュームに合わせるものなので、常に身につけて確かめるんです。ネックレスのチェーンが短すぎると洋服の襟にかかってバランスが悪いとか、長時間つけていても負担にならないなど使い心地も確かめます。デザインも大事ですけど、やっぱり自分でつけてみないとわからないですからね。
浅井:それから、今日着ているワンピースは、ファブリックステンシルで自分で柄を描いたものなんです。
——洋服まで手づくりとは……! ファブリックステンシルってどういうものなのですか?
浅井:さすがに洋服は既成のものを使用しているんですけどね(笑)
ファブリックステンシルは、洋服などにデザイン画の型を合わせて筆で染色する手法ですね。月に一度、講師の田中弥生先生がこのアトリエに来て、教室を開いてくれています。既成の洋服でも、自分だけのオリジナルなデザインになるのが魅力的ですよ。ただ、次回の課題がとてもむずかしくて、頭を抱えているところです(笑)
吹きガラスは時間との勝負
——吹きガラスもやられているんですよね。
浅井:そうなんです。実はコスチュームジュエリーよりも歴が長いんですよね。週に一度、彩グラススタジオというところで、伊藤けんじ先生に教わっています。先生のつくる作品は、精緻にして繊細なテクニックがすごいんですよ。いくら頑張っても先生のようにはつくれませんね。当然ですが……! でもとってもおもしろいですよ。
——コップの底に模様がある……!
浅井:この模様もつくるんですよ。ミルフィオーレという技法で、パーツになるガラスを細長く伸ばしていって、輪切りにするんです。金太郎飴みたいにね。それをコップの底に並べるとこんな感じになるんです。
ほかにも吹きガラスにはいろんなつくり方があるし、同じモノを同じようにつくってもなかなかうまくできなくて悩んでいます。よく伊藤先生が言っているんだけど、吹きガラスはスポーツって。
——スポーツですか……!?
浅井:そう、そう(笑)。熱いうちに成形しないといけないから、時間との戦いなのよね。モタモタしていると、ガラスが冷え固まって試合終了になってしまうからって。ガラスを温め直してかたちを整えることはできるけど、ほぼ一発勝負なんです。
それに比べてコスチュームジュエリーは、「どうしようかな〜」とじっくり考えてつくれるし、何回でもやり直しできる。同じものづくりでも、全然違うから、おもしろいですよね。
身体を癒す “きくち体操”
——コスチュームジュエリーも吹きガラスも、細かい作業が多いと思いますが、身体が凝り固まったりしませんか?
浅井:とっても凝りますよ!(笑)でも、“きくち体操” に通っているおかげで、凝りが続かない身体になりました。
以前は、毎週のように接骨院に通って治療をしてもらっていたんです。治療費が1回5000円だから、月に2万円くらいよね。それを2〜3年続けたけど、ちっともよくならなかったの。そんなあるとき、友達が “きくち体操” の体験に誘ってくれて、一緒に行ってみたら衝撃を受けました。
——すぐに凝りが治ったとか?
浅井:いえいえ、先生がね、87歳の女性なんだけども「身体を動かすのは脳なのよ!」って大声で言うの(笑)。足の小指だけ動かせます? もし動かせないなら、脳と小指の神経がつながっていないからなんですって。
将来身体が動かなくなってしまわないように、脳と身体の両方を刺激するような体操をきくち先生は教えてくれるんです。
——体操で脳を刺激するというのは、あんまり意識したことがなかったです。
浅井:そうですよね。普段細かい作業をしているので、身体は凝るんですけど、体操に通い始めてからは接骨院に行くほどではなくなりました。教えてもらった体操は家でもできるので、習慣的に身体を動かしていることがものづくりを続けられる秘訣なのかもしれなませんね。
私は何でも興味が湧くと、とりあえずトライしてみます。おもしろければ続けられますよね! 吹きガラスを始めてから17~18年、コスチュームジュエリーは丁度10年経ちますけど、どれも先生に恵まれているなと感じるんです。
これからも、ものをつくって、身体が凝ったらきくち体操をして、またつくる。そうやって楽しんで行けたらいいなと思います。
▼展覧会情報
い・ろ・ど・り展
会場:鎌倉 雪ノ下画廊
会期:2021年6月10日(木)~6月13日(日)
開催時間:10:00~18:00※
休館日:会期中無休
最寄り駅:鎌倉駅
※最終日のみ16:00まで
コスチュームジュエリー~7名の作家展~
会場:STAGE銀座
会期:2021年6月13日(日)~6月19日(土)
開催時間:11:00~19:00※
休館日:会期中無休
最寄り駅:新橋駅、銀座駅
HP: https://stage-ginza.com/
※初日のみ13:00から
※最終日のみ15:00まで
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