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お金以外の財産を処分する方法

どうなる? 私のコレクション……!

特集 100歳までのお金の使い方 2020.10.28

取材・文:花塚水結

「財産」と聞くと、お金をイメージする人が多いのではないでしょうか?
自分が亡くなったあとは、家族で分けてもらえば……と思っているそこのあなた。財産は、お金以外にもたくさんあります。
たとえば、住んでいる自宅や加入している保険、好きで集めているコレクションも財産になります。こうしたお金以外の財産を処分する方法を教えてくれたのは、一般社団法人生前整理普及協会の宮家史子さん。私のコレクションは、どのようにして処分すればよいのでしょうか。

 

財産になるものは「お金」以外にもある

花塚:相続についての話をすると、「たいして貯金もないし……」などとおっしゃる方が多いですよね。でも、長い間、人生を歩んでこられたわけですから、多くの「価値あるもの」をおもちだと思います。
亡くなったあとに親族などに引き継がれる「財産」。お金以外にどのようなものがあるのでしょうか。

宮家:そうですね、主に下記のようなものだと思います。

現金以外の財産(引き継いでいくもの)

・不動産(土地、建物など)
・金融商品(投資信託、株、外貨預金、FXなど)
・車
・保険(生命保険、損害保険など)
・ゴルフ会員権
・動産(コレクション、骨董品など)
・借入金
・保証債務
・クレジットカード、電子マネーなど
・デジタル遺産
・祭祀財産(仏壇、お墓など)

花塚:財産と一口にいっても、かなり種類がありますね。

宮家:はい。相続時に財産の対象になる「相続財産」以外にも、遺された人に引き継いでもらうものなど、財産はたくさんあります。これらのすべてのものを残してしまうと、遺された家族の負担も増えてしまいますし、できるだけ生前に処分したほうがいいですね

花塚:なるほど……。では、これらの処分方法を教えてください!

宮家:わかりました。

 

不動産は買い手を見つけることが大事

宮家:まずは、不動産です。不動産の処分といえば、売却か誰かに譲るのが一般的でしょうか
売却をするには、その土地や条件にあった大まかな相場を知り、買い手を見つけるのが重要です。売却できるのは「価値のある不動産」ですからね。

花塚:そうか……不動産の条件によっては買い手が見つからないことも考えられるのですね。どうやって、買い手をみつければいいのでしょうか?

宮家:不動産販売業者に仲介を依頼するか、自分で見つけるか、だと思います。

花塚:自分のまわりに買い手が見つかれば話は早いですが、見つからない場合は業者に依頼するしかないのですね。
それでも買い手が見つからない場合は、どのようにすればよいでしょうか?

不動産は価値が低いと買い手を探すのがむずかしくなってしまう

宮家:親族などに贈与するとよいのではないでしょうか。親族への贈与もむずかしければ、近所の人などにタダでも引き取ってもらえる人を探しましょう。
「あげる側」と「もらう側」が合意していれば名義変更はむずかしい話ではないのですが、贈与税がかかる場合があります。

花塚:贈与税は、「もらう側」にかかる税金ですよね!

宮家:はい。贈与だけでなく不動産の処分にはいろいろな税金が絡んできますので、税理士や専門家の方にご相談されることをおすすめします

 

忘れがちな「ネット系金融機関」

花塚:ほかの財産の処分についてはどうでしょうか?

宮家:そうですね。金融商品やクレジットカード、電子マネーなど、解約できるものは解約しておいたほうがいいです
特に金融商品の場合、「ネット銀行」や「ネット証券」を利用していると、みなさん口座があることを忘れがちなんですよね。

使っていない口座は早めに解約するとよい

花塚:どうして忘れてしまうのでしょうか?

宮家:花塚さんは登録だけして取引をしていない口座、ありませんか?

花塚:あっ……! そういえば私も、学生時代にバイト先の給料を受け取るためにつくった口座を、3年越しに解約しました(笑)。取引がなくなると、その存在を忘れがちですね。

宮家:意外とあるんですよね。取引をしていれば明細が届くなどしてその存在を覚えていますが、取引をしていないと明細も届かないでしょうから忘れてしまいますよね。それに、ネット系の金融機関だと、「お知らせ」の配信もサイト内やメールで完結している場合もあるので、忘れてしまうことが多いんです。

そのため、相続のときにもめる理由にもなりやすいです。遺産分割協議のあとにネット銀行の口座が見つかって、そこに預金高があったことが判明し、やり直しなんてことも……。

花塚:遺産分割する側は大変ですね……。取引をしていない口座があるか否かを思い出せない場合はどうすればいいですか?

宮家心当たりのある金融機関に問い合わせするしかないですね。昔住んでいた地域や勤めていた会社の近くにあった金融機関にある可能性もあるでしょうから、使っていない口座は早めの解約をおすすめします。

 

「負債」は相続される前に処分がベスト

花塚:不動産や金融商品だけでなく、負債も財産の一部なんですね。

宮家:そうですね。貯蓄や不動産などの価値のあるものは「プラスの財産」、借入金や保証債務などの相続人にとって負担となるものは「マイナスの財産」と呼ばれています。これらは相続財産の対象になるので、できれば負債も早めに対処しておきたい財産のひとつです

花塚:負債の処理はどうすればいいんでしょうか……?

宮家基本的にはお金を返していくことになります。どうしても返済のめどが立たなければ、「自己破産」などの債務整理手続きをとらなければならない可能性もあります。

花塚:そうですよね……。
もし、負債の存在を忘れてしまった場合は、どうすればいいですか?

宮家:負債があればお金を返していると思うので、忘れないはずなのですが……。
返済が滞ってしまうと、貸金業者から督促状が送られてきます。万が一、忘れてしまった場合は、通帳の引き落としを確認したり、信用情報機関で情報の開示請求をするといいと思います。ただ、個人間での取引情報は載りませんから、気をつけてください。

いずれにしても返済が困難になった場合は、早めに弁護士や司法書士に相談してください。長期間取引がなければ、消滅時効の援用ができる場合もあります。
また、保証債務は忘れているケースもあります。誰かに頼まれて、保証人になっていないかどうか、よく思い出してください。

 

できれば手放したくない! コレクションの処分

宮家:価値があるかはわかりませんが、コレクションなども財産となり得る可能性があります。

花塚:コレクション……。私の部屋にも大量のアイドルグッズがあるのですが、手放したくない気持ちと、部屋が狭くなっていくからどうにかしたい! という気持ちがあります(笑)

宮家:幸せな悩みですね(笑)。でも、コレクションであれば、「捨てる」以外にも選択はあります。

花塚:なんですか!?

宮家メルカリやラクマなどで売るんです。リサイクルショップで売る方法もありますが、アプリのほうが大勢の人に見てもらえる可能性があります。コアな人もいるかもしれませんから、おすすめですよ。
それから、寄付でもいいと思います。タオルやシーツなどを受け入れている介護施設もあるんです。誰かのためになると考えると、手放したくないものでも処分しやすいのではないかと思います。

花塚:誰かが喜んでくれるなら、手放し甲斐がありますね!
でも、誰かの手に渡って、大切にされなかったら悲しいです……。

宮家:それなら、いい方法があります。エステートセールに出してみましょう!

花塚:エステートセールって、なんですか?

宮家処分したいけど、想い入れがあってなかなか手放せないものを、「想い」と一緒に販売するシステムです。もともとはアメリカ発祥のシステムで、生前整理や遺品整理で不要になった価値あるものを、所有者の「想い」と一緒に引き継いでもらうためのに生まれました。
仲介人が、所有者のものへの「想い」をヒアリングし、販売する際にその「想い」も届けるんです。

花塚:そのシステム、とてもいいですね!

宮家:私が所属している生前整理普及協会でも、エステートセールの普及を進めています。

生前整理普及協会のホームページ。エステートセールのほか生前整理についての相談もできる

宮家:特に日本人形をはじめとする、日本の伝統工芸品は海外の方に人気なことがあるんです。ものが生まれた時代背景や、受け継いだ歴史を伝えることで、より大切にしてもらえますよ。

 

これから問題が増えると考えられるデジタル遺産

宮家:あと、これは最近多い問題ですが、「デジタル遺産」の処理ですね。

花塚:スマホに入っているデータなどですね。

宮家:はい。スマホに限らずパソコンなどの端末本体もそうですが、特に中身のデータは問題になりやすいですね
現代では、連絡のほとんどをスマホやパソコンで済ませる人が多いですよね。亡くなったとき、スマホのロックを解除できず、家族が誰に連絡すればいいかわからないことがあります。業者にもって行っても、解除できないケースも多いです。

それから、家族は思い出の写真データを見たくても、亡くなった方からしたら見られたくないこともありますよね?

中身のデータも財産になる

花塚:……はい。といっても私のスマホに入っている写真のほとんどは、アイドルの写真なので見られても問題ないといえばないですが……。あんまり見られたくはないですね(笑)

宮家:ですよね。現在、デジタル遺産に関する規制などもないので、とてもむずかしい問題になっています。
今のところ、パスワードを紙に書いて保管しておくのが最善ではないかと思うのですが

花塚:どうして紙に書いておくのでしょうか?

宮家:データで残していても、データを残すのは、結局スマホかパソコンですよね。それが開けられないと意味がないので(笑)

花塚:そうですね(笑)

 

「今日より若い日はない」からパワーがあるうちに整理する

花塚:お話を伺っていて、現金以外の財産の多さに驚きました。
今のうちに財産を整理する「生前整理」を行なうメリットとはなんでしょうか?

宮家:「終わり」を意識することで、残された時間が見えてくると思います。そうすると、やりたいことや、やり残したこと、そして大切な人が自然と思い浮かんでくると思うんですよね。やりたいことが見えると、今度はそのために行動できるようになり、悔いの少ない人生を送ることができるのではないでしょうか

花塚:ゴールを意識すると、それまで考えていなかったことも思い浮かぶようになるかもしれませんよね。

宮家:はい。それから、生前整理普及協会でよくいっていることなのですが、人間誰しも「今日より若い日はない」んですよね
生前整理は、気力や体力など、どうしてもパワーが必要になってきます。パワーは歳を重ねるごとに衰えてしまうので、一番若い「今」に生前整理をするといいんじゃないかと思っています

やろうと思っているうちに体調を崩してしまったり、認知症になってしまうこともあります。ましてや亡くなってしまっては、やりたいことも、大切な人への想いを伝えることもできません。生前整理をして、やり残したことがない人生を送っていただきたいと思っています。

あなたの身のまわりにも、処分に困っている財産はありませんか? 処分に困っている財産やものがあれば、ぜひコメントで教えてください!

 

協会情報
一般社団法人生前整理普及協会
〒450-0003
愛知県名古屋市中村区名駅南1丁目19-27
オルバースビルディング名古屋 5階
電話:052-485-8137
FAX:052-581-4343
メールアドレス: info@seizenseiri.net
ホームページ: https://www.seizenseiri.net/

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宮家史子

司法書士。行政書士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。生前整理アドバイザー1級。2004年にみやけ司法書士・FP事務所、2018年にみやけ行政書士事務所を開業。一般社団法人生前整理普及協会にも所属し、認定指導員として生前整理を広げる活動を行っている。 https://www.miyake-hyogo.com
宮家史子

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