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今、読みたい! 榎田ユウリ『この春、とうに死んでるあなたを探して』

喪失、絶望の先にある、新たな出会い

連載 ZIEL編集部が選ぶ 今、読みたい本 2021.3.29

文:出口夢々

編集部・出口が、ZIEL読者のみなさんに今、読んでいただきたい本を紹介する連載「ZIEL編集部が選ぶ 今、読みたい本」。毎月の特集テーマと関連のある内容の本を選び、紹介していきます。
第7回目に紹介するのは、2021年3月9日に発売された榎田ユウリの『この春、とうに死んでるあなたを探して』。3・4月の特集テーマ「春こそ、人生に祝福を!」に関連して、新たな出会いによって人生を変化させていく主人公を描いた1冊を紹介します。

 

先生の死の原因に迫る

 

幼少期から親の都合で転校を繰り返してきた、主人公・矢内。転校先でいじめられないよう、勉強も、人間関係もそつなすこなすよう心がけてきました。大人になり、妻と別れ仕事にも疲れた矢口は、中学時代を過ごした雨森町に戻ります。

ひょんなことから、矢口は中学時代の同級生たちと再会。当時の担任の先生であり、矢口の初恋の相手だった文月先生は亡くなったと聞かされるのです。原因は事故死。ですが、「文月先生は自殺したらしい」という噂も出回ったと、矢口は聞きました。

そんなある日、矢口の同級生・花川のもとに一通の手紙が届きます。

「私はあなたたちに殺された。見ていただけの子も同罪です」

一般的な縦長の白封筒に入れられた手紙の差出人は不明。ただ、押されていた消印が埼玉県・川越市になっていることから、矢口は、文月先生の実家から送られてきたものではと推測します。

やはり、文月先生は事故ではなく自殺だったのか——。手紙に書かれていたように、文月先生が死にいたった原因は当時の生徒にあったのか——。同級生たちとともに、矢口は謎に向かう。大人の青春小説です!

 

復活した友情に心打たれる

 

文月先生はなぜ死んでしまったのか、その原因が気になりつつも、矢口をはじめとする同級生たちのわちゃわちゃとした雰囲気がとても楽しげで、「友達っていいよな〜〜」とほのぼのした気持ちでページをめくっていました。大人になってからできた友達と会うのも楽しいですが、多感な時期を同じ校舎で過ごした同級生と会うと、また違った楽しさがありますよね。

先生や妻を失った喪失や絶望を経て、また新たな出会いを迎える——。苦しみを味わいながらも、仲間たちとともにそれを乗り越える矢口の姿に注目です!

この本を読んでみたいと思った方、実際に読んだ方はコメント欄で感想を教えてください!

書籍情報
『この春、とうに死んでるあなたを探して』榎田ユウリ著 文春文庫
定価:760円(+税)
発売日:2021年3月9日
ISBN:9784167916572

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