今読みたい! 原田マハ『やっぱり食べに行こう。』
人気作家が綴るグルメエッセイ
文:出口夢々
編集部が新刊本を紹介する連載「ZIEL編集部が選ぶ 今、読みたい本」。毎月の特集テーマと関連のある内容のものを選び、紹介していきます。
第13回目に紹介するのは、2021年11月1日に発売された原田マハの『やっぱり食べに行こう。』。アート小説を数多く生み出す原田マハさんが、パリやニューヨーク、ロンドンなどの取材先で食べた思い出の一品を綴るグルメエッセイです。
原田マハのアートと小説と美味探訪の旅
アンリ・ルソーの作品〈夢〉に隠された謎を解明すべく物語が展開される『楽園のカンヴァス』や、突如姿を消したピカソの〈ゲルニカ〉を探し出すアートサスペンス『暗幕のゲルニカ』など、多くのアート小説を生み出している原田マハさん。
画家のゆかりの地や、絵画作品が生まれた場所など、世界中へ足を運び、徹底的に取材を行っているのだとか。海外での取材や日本での執筆時に原田さんにパワーを与えてくれるのが、「おいしい!」料理です。
『やっぱり食べに行こう。』は、世界中の「おいしい!」を求めて旅する原田さんが綴った、グルメエッセイ。「アートとグルメ」や「欠かせない一品」など、原田さんが愛してやまないおいしいものが約100品も紹介されています。
パリやスペイン、ロンドンなど、世界中のおいしいものが収録されている本書は、まるで “世界美食ミュージアム”。エッセイを読んでいるだけなのに、よだれが止まりません! 「美術館のマフィン」で綴られる、パリのルイ・ヴィトン財団美術館で展覧会を見ながら朝食を食べた経験や、「マンハッタンのドーナツ」で綴られる、ドーナツスタンドでドーナツとコーヒーを買い、それを食べながら出勤していたという過去の習慣など、シチュエーション込みで惹かれる食の体験もたくさん語られています。「なんて素敵な食事なのだろう」と、心躍るエッセイばかりです。
エッセイのひとつ「マカロンの生まれ変わり」では、少し変わった質問が読者に投げかけられます。
「ところであなたは、何の生まれ変わりですか?」
と問われるのです。
一体何のことやらと思う質問ですが、これは「ひょっとして私は○○の生まれ変わりなんじゃないだろうか……」と思ってしまうほど、大大大好きな食べ物は何ですかという質問。ちなみに原田さんは「牡蠣の生まれ変わり」だと語っています。
この質問、問い自体はシンプルですが、答えようとするととてもむずかしい……。「好きな食べ物は桃だけど、生まれ変わりかもしれないと思うほど好きではないかもしれない……。じゃあ疲れたときに決まって食べたくなるトマト? いや、でも、ときめきを覚えるほどおいしいと感じるのはプラムかもしれない」という具合に、小一時間ほど考え込んでしまいました。やっと出た結論は「プラムの生まれ変わり」。ほどよい酸味のある甘さがたまらなく好きなんですよね。桃ほどやわらかくなく、プルーンほどしっかりしていない、絶妙な食感も好きです。……などと考えると、私はまさにプラムの生まれ変わり! そうとしか言いようがない!
みなさんは何の生まれ変わりですか? ぜひコメント欄で教えてください!
- 書籍情報
- 原田マハ『やっぱり食べに行こう。』(毎日文庫)
定価:700円
発売日:2021年11月1日
ISBN:978-4-620-21037-7
https://mainichibooks.com/books/paperback/post-525.html
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