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名家を舞台に巻き起こる不可解な事件を金田一が解決へを導く――『犬神家の一族』

愛と憎しみが絡み合った連続殺人事件

連載 スクリーンZIEL 2021.10.22

文:花塚水結

編集部・花塚が今観たい映画作品を紹介する連載「気になるシーンをコマ送り スクリーンZIEL」。第13回目は、1976年10月16日に公開された『犬神家の一族』です。

大富豪の犬神佐兵衛が遺した奇妙な遺言状をきっかけに起こる、骨肉の争いを描いたミステリー映画です。歪んだ愛情や憎しみが絡み合った連続殺人事件に、探偵の金田一耕助が挑みます。

11月より開催される「角川映画祭」の目玉作品として、市川崑監督の『犬神家の一族』4Kデジタル修復版が初披露されることとなり、その試写会に編集部が参加してきました!

角川映画祭の記事はこちらから。
『犬神家の一族』4Kデジタル修復版が世界初披露「角川映画祭」11月開催

 

骨肉の争いで起こった事件に挑む探偵・金田一耕助

 

舞台は戦後間もない1947年、架空の那須市。地元で有名な「犬神製薬」の創始者・犬神佐兵衛の死から7カ月が経過した地に、私立探偵の金田一耕助がやってきます

(C)KADOKAWA1976

金田一は若林という男から依頼を受けていましたが、詳しい内容は聞いていないままでした。そして、これから依頼内容を聞こうとした矢先、若林は毒殺されてしまったのです

若林は、7カ月前に死亡した犬神佐兵衛の遺言状を厳重に保管していた人物でしたが、同じく遺言状の保管役をしていた古舘という男に若林の不審な死の真相と、犬神佐兵衛の奇妙な遺言状の解明を再度依頼され、雇われることになりました。

犬神佐兵衛の遺言状の内容は、9人の肉親と、佐兵衛の恩人の孫娘で犬神家に身を寄せている野々宮珠世らが全員揃ったら公表される約束に則り、一族と金田一は、復員した犬神佐清と、佐清を迎えに行った母親の松子の帰りを待っていました。やがて、松子が連れ帰ってきたのは、戦地で顔の判別もつかないほどの大けがを負い、白いマスクを被った佐清でした。

そしてついに遺言状の内容が、古舘の口から公表されます。

その内容は、犬神家の全財産と事業の相続権を象徴する三種の家宝「斧・琴・菊」は、佐兵衛の男孫である佐武、佐智、佐清の3人のうち1人と結婚することを条件に、珠世に譲られる。それが成されなかった場合、相続人は青沼静馬という男になる、とのこと

(C)KADOKAWA1976

遺言状の内容に激怒する犬神家の一族と戸惑う珠世を尻目に、金田一は遺産を巡って争いが起きるだろうと考えていたのでした。

そして数日後、古舘からの電話で犬神家を訪れた金田一が発見したのは、殺害された佐武の生首が、菊人形と差し替えられた様。ここから金田一の捜査が始まっていくのです

(C)KADOKAWA1976

 

事件の裏には深い愛情がある

 

実はミステリー好きと言っていながら『犬神家の一族』を鑑賞するのは今回がはじめて。白いマスクを被った佐清も、湖から出る足のシーンも知っていたので、聞き覚えのあるテーマ曲とともにスクリーンに映ったタイトルを見た瞬間、心が震えました

本作品が制作されたのは戦後10年ほどが経過したころ。最新技術を駆使した現代の映画にと比べると、映像表現に劣る部分はありますが、随所に制作の工夫が垣間見えました。

その1つにBGMがあります。たとえば、主人公が急いでいるシーンには激しいドラムの楽器演奏がつけられていました。『8時だョ!全員集合』で、生バンドがコントに合わせた生演奏を行う、あの感じ。スクリーンの後ろに生バンドがいるのではないだろうか、と思わせるほどの臨場感がありました

そして、ストーリーは不可解で残忍な連続殺人事件を描いたものだと思い込んでいたのですが、予想とは全然違うものでした。事件の裏には、絡まってしまった深い愛情が浮かび上がり、なんだか切ない気持ちにさせれらます。

「タイトルは知っているけど、観たことないな」と思っている方にこそ、観ていただきたい作品です!

(C)KADOKAWA1976

 

映画の印象を色濃いものにする「愛のバラード」

ところで、“聞き覚えのあるテーマ曲” 、みなさんも一度は聞いたことがあると思いますが、曲のタイトルをご存知でしょうか。

実は「愛のバラード」というタイトルなんです

私も映画鑑賞後に調べて知って驚きましたが、映画の内容を知っていると、納得します。鑑賞後、改めて曲を聴いてみると、さみしくも、歪んでしまった愛情が沁みました……。Apple MusicやSpotifyなどで聴けるので、映画鑑賞後にはぜひ!

そんな『犬神家の一族』がスクリーンで観られるのは、11月に開催される「角川映画祭」だけです! 映像も4Kへと修復され、戦後につくられた映画とは思えないほど、とてもきれいでした。この機会に劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか?

作品情報
『犬神家の一族』
初公開:1976年10月16日
4Kデジタル修復版公開日:11月19日(金)~ テアトル新宿、EJ アニメシアター新宿ほか
監督:市川 崑
脚本:市川 崑、 横溝正史、 日高真也、 長田紀生
出演:石坂浩二、島田陽子、あおい輝彦、川口 晶、坂口良子、原泉、草笛光子、大滝秀治、岸田今日子、加藤 武、高峰三枝子、三國連太郎ほか
配給:KADOKAWA
公式サイト: https://cinemakadokawa.jp/kadokawa-45/

(C)KADOKAWA

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