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ゴッホより普通にラッセンが好きな人が「ゴッホ展」を鑑賞したら、普通にゴッホを好きになっちゃうんじゃない?

「ゴッホ展」の魅力をお伝えします!

特集 私の好きな名作 2021.10.08

取材・文:花塚水結

9月18日より東京都美術館で開催されている「ゴッホ展——響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」。

正直、絵画には詳しくないけれど、“生ゴッホ” を一度は観てみたいもの。“生ゴッホ” と言っても、もちろん本人にはお目にかかれるわけではありませんが、ゴッホが描いた絵を観てみたい!

せっかく「ゴッホ展」に行くなら、誰かと一緒に行きたいなぁ、と考えていると、頭のなかにミュージックが流れてきました。

 

 

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「ゴッホより~普通に~ラッセンが好き~!」

 

 

 

 

!!!

はっとしました。

あの、お笑い芸人・永野さんの「ゴッホに捧げる歌」が頭のなかに流れてきたのです。そこである考えが浮かびました。

 

 

「ゴッホより普通にラッセンが好きな人が『ゴッホ展』を鑑賞したら、普通にゴッホを好きになっちゃうんじゃない?」

 

 

そして、永野さんに「ゴッホ展」を一緒に観てもらえないかとお願いをしたところ。

 

 

 

「いいですよ」

と返事をもらいました。いいんかい! 普通にゴッホを好きになっちゃう可能性あるかもしれないのに、いいんかい!!!

しかしこんなチャンスはありません。絵画には詳しくはない私ですが、永野さんがゴッホを好きになる瞬間を観られる! かもしれない……! こうして、スペシャルな企画が実現することになりました。

今回は「ゴッホ展」を鑑賞した永野さんの感想を全力でお届けします。

 

「ゴッホ展」は時を超えたファンミーティング

 

~永野さん、「ゴッホ展」鑑賞後~

花塚:「ゴッホ展」を鑑賞していただきましたが、どうでしたか?(ゴッホ、好きになっちゃったんじゃない?)

永野:絵画の世界は詳しくなかったんですけど、僕が好きな映画に例えると、映画をつくった監督の作品として鑑賞する感覚と一緒で、“ゴッホ” そのものを感じられたというか。鑑賞されているみなさんも、ゴッホに会うために来ているんだなと思ったんです。

花塚:(真面目に答えてくれた……)

永野:ただ絵画の鑑賞が好きならば、絵だけをポンと飾って、それを観ればいいだけじゃないですか。でも、絵の横にはキャプションがあって、何年に描かれたとか、当時の背景みたいなものが書かれている。そういうものを読んでいると、ゴッホというキャラクターがだんだんと浮かび上がってくるなと。

花塚:私も自然と「どんな気持ちでこの絵を描いたんだろう?」と考えていました。

永野:ですよね。映画も好きな監督の作品を観て、このときの監督はこんな気持ちだったんじゃないか、と考えるんですよね。でも、好きな監督なら、アッパーな時期の作品も、ダウナーな時期の作品も、どんな作品も追うんです。
そういう意味では、絵画の世界でも絵を描いた “ゴッホに会いに来ているんだ” と思ったのが僕のなかでは衝撃でしたね。時を超えたファンミーティングみたいな

花塚:(時を超えたファンミーティング……名言だ……)

永野:耳を切るという有名なエピソードや、住む場所を点々としていたこと、それに影響されてか絵のタッチがとても変化した様を観て、とてもパーソナルな部分を感じました。だから、とてもおもしろかったですよ。

 

「きれいなものを描かない」ところにグッときた

 

花塚:今回の「ゴッホ展」で一番印象的だった作品はありましたか?

永野《女の顔》ですね

花塚:背景も顔も暗い色を基調に描かれていて、インパクトがありましたよね。暗闇から誰かがこちらを見ているような。

永野:はい。普通、絵ってきれいなものを描きたくなるじゃないですか。きれいな女の人とか、きれいな風景とか。でも、ゴッホの《女の顔》は骨格がゴリゴリしていて、色味も生活感があるというか。女の人も醜いとまでは言わずとも、普通だったらモデルに選ばないような人を選んで、《女の顔》とタイトルをつけるところに、自分的にはグッとくるものがありました

《女の顔》を鑑賞する永野さん
フィンセント・ファン・ゴッホ《女の顔》1884-1885年1月
クレラー=ミュラー美術館蔵

永野:後は《草地》もよかったですね
もう本当に線だけなんですけど、迷いがなくてすごいなと。

花塚:キャンバスいっぱいにカラフルな線がびっしり描かれていましたよね。

永野:はい。ただの草を描いているだけの絵なのに、何でこんなにパッションがあるんだろうと思いましたね。草って普通は描かないじゃないですか。

花塚:そうですね。花の横に生えている草として描くくらいですよね。

永野:単体ではまず描かない。描くとしても、わびしいものとか、素朴なものとして描くと思うんですよ。なのに、ゴッホの絵は草なのに生きている感じがすごく伝わってきました。
でも正直言って、ゴッホが描いた絵ではなかったら、迷うと思います。

花塚:迷いとは、どういうことでしょうか?

永野:例えば、子どもがこの《草地》を描いたのだとしたら「元気な絵だね」とは言えるけど、ゴッホみたいに「うわ〜これはすごい」と感動するのかなって。よく「いいものがいいんだよ」って言う人もいますけど、ならば、盗作とかも “いい作品” になってしまうじゃないですか。

花塚:たしかに。盗作はよくないですからね。

永野:だからゴッホのすごさを知るにはいろんな絵を観ないとダメですよね。直感も大事ですけど、勉強も大事だなと思いました

花塚:(ゴッホのこと、もっと知りたくなってる……!)

永野:それから、《夜のプロヴァンスの田舎道》もよかったですね

花塚:今回の「ゴッホ展」の目玉ともなっている作品ですね!

フィンセント・ファン・ゴッホ 《夜のプロヴァンスの田舎道》 1890年5月12-15日頃
油彩、カンヴァス 90.6×72cm クレラー=ミュラー美術館蔵
©Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

永野:とても有名な絵画なので以前から知っていましたが、実際に観てみると、構図の迷いのなさとか、手前に人を歩かせる冒険心とか、月と同じくらい明るい星のファンタジーさとか……。いろいろな要素が詰まった作品だなと思いました

花塚:《女の顔》とは対照的に、色も鮮やかでしたよね。

永野:そうですよね。はじめのほうに展示されていたデッサン画から、《夜のプロヴァンスの田舎道》のような名作が生まれるって、どこかゴッホの成長を見ているかのような気もして。きっと、いろいろな風景を見たり、人の影響を受けたり、研究して、たどり着いたのではないかと思うと、感動します

花塚:感動、されたんですね。
(……ゴッホ、好きになっちゃったんじゃない?)

《夜のプロヴァンスの田舎道》を鑑賞する永野さん

 

ゴッホは才能が狂い咲いた努力家ではないか

 

花塚:永野さんと言えば「ゴッホに捧げる歌」が人気ですよね。今回の「ゴッホ展」をとおして、ゴッホにどんなイメージを持たれましたか?

永野:絵を描く能力が高いのは前提ですが、天才というよりは努力家だと感じましたね

花塚:と言いますと?

永野:ポンポン、と絵が描けてしまうような人ではなく、画家になりたいという意思を強く持っていたんじゃないかなと。ずっと何かに飢えていて、だからこそ最後までものすごいパワーで絵を描き続けて、凡人が狂い咲いた印象を受けました

花塚:(え、ゴッホ、好きになっちゃったんじゃない!?)

 

 

 

(よし、聞く……)

 

 

 

(聞くぞ……!!!)

 

 

 

……じゃあ、あの、最後に聞きたいんですけど、ゴッホとラッセンどっちがお好きですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永野ゴッホですね

花塚:(即答だと……?)

永野そりゃあ、ゴッホですよ

花塚:(そりゃあ、そうなの……?)

永野なんなら、ずっとゴッホが好きでしたけどね

花塚:(えーーーーーーー! 最初からゴッホが好きなんかい!!!)
あっ、そうなんですね。てっきりラッセンがお好きなのかと思っていました。

永野:朝パッと目覚めたときにゴッホとラッセンの絵が並んでいて、どっちが好きかと聞かれたらラッセンを指さすな、と思って。
店で食べる家系ラーメンと家で食べるカップラーメンだったら、カップラーメンのほうが好きみたいな。その究極形として「ゴッホに捧げる歌」を歌ってました。なんかこの例え、怒られそうですけど(笑)

花塚:たしかに……(笑)。でもすごくわかります。それぞれによさがあって、どっちも好きで、でも「カップラーメンのほうが好き!」って言いたくなる気持ちというか。

永野:そうなんです。だからゴッホは好きですよ。結構地味で素朴なものを描いたりもするじゃないですか。農村やそこに暮らす人々、果物、暗い部屋とか。そこに表れている少しかわいそうな部分とか、十分に報われなかった部分とか、狂気的な人間の情念をとても感じます。そういう部分がとても好きです

花塚:(すごい好きじゃん)
なるほど。ゴッホを好きな気持ちがとても伝わってきました。それを知れただけで、とてもうれしかったです! 本日はありがとうございました!

 

~結果~

ゴッホより普通にラッセンが好きな人が「ゴッホ展」を鑑賞したら、普通にゴッホが好きになっちゃうんじゃない?

の結果は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初からゴッホが好きだった」

でした。

なにはともあれ、ラッセンのみならず、ゴッホのことも好きでよかったぁ~~~!

 

 

~♪

 

 

~~♪

 

 

~~~♪

 

 

「ゴッホより~普通に~ニルヴァーナが好き~!」

 

!!!

9月25日に永野さんの著書『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』(リットーミュージック)が発売されました! 永野さんが語る、「ロック愛」をぜひご堪能ください。

 

……ゴッホじゃないんかい!

 

展覧会情報
「ゴッホ展——響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」

会場:東京都美術館
会期:2021年9月18日(土)〜12月12日(日)
観覧料:一般2000円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1200円、高校生以下無料(日時指定予約必要)
開室時間:9:30〜17:30/10月15日以降の金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日 ※11月8・22・29日は開室
最寄り駅:上野駅
展覧会公式サイト: https://gogh-2021.jp
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
※日時指定予約制。詳細は展覧会公式サイトへ

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