時代の並走者、篠山紀信の大回顧展——「新・晴れた日 篠山紀信」
ZIEL編集部おすすめ! 時代の熱量をとらえた116作を展覧
文:出口夢々
2021年5月18日(火)より東京都写真美術館で開催される「新・晴れた日 篠山紀信」。自らを「時代の並走者」と評する篠山紀信の60年間にわたる活動の全容を一望する初の大回顧展を紹介する。
サムネイル画像:〈誕生〉1968 年
「時代のドキュメント」を総覧する展覧会
写真家・篠山紀信。1963年に卒業制作が雑誌『カメラ毎日』で取り上げられたのをきっかけに、瞬く間に若手写真家として注目を集め、今日まで休むことなく幅広い分野にレンズを向けてきた。2021年5月18日(火)より東京都写真美術館で開催される「新・晴れた日 篠山紀信」は、彼の60年間にわたる活動の全容を一望する初の大回顧展である。
展覧会のタイトルにある「晴れた日」は、1974年に雑誌『アサヒグラフ』で連載され、のちにその連載をまとめた写真集『晴れた日』に由来している。これは篠山の作品の特徴である「時代の熱量をとらえた写真」が凝縮された一冊で、「写真はうまれながらにして大衆性を背負っているメディア」と自身で語るように、長嶋茂雄や輪島功一、オノ・ヨーコなど、誰もが知るアイコンを散りばめながら、広範に社会の動きを捉え、昭和という時代の尖鋭な批評となっている。
本展では、この『晴れた日』の構造を用いて、二部構成で60年間にわたる篠山紀信の116作品を展覧。
第1部では写真界で注目を集めた1960年代の初期から、『晴れた日』や1976年のヴェネチア・ビエンナーレでも出品された『家』ほか、その後の幅広い活躍の原点となる1970年代までの主要作品で構成。1960年代のエネルギーに溢れた時代に相応しい新しい表現として評価された、初期の代表作〈誕生〉や、1970年代以降、篠山が手がけた雑誌『明星』の表紙の仕事で生まれた「アイドル」文化の原点となる作品を展示する。
第2部では、1980年代以降の作品を中心に、バブル経済による変貌から2011年の東日本大震災を経て、2021年に向かい再構築される東京の姿まで、創造と破壊、欲望と不安が相即不離な変化の時代を捉えた作品を紹介する。
「カメラマンは自分の生きている時代しか撮れないんだから、これはぼくにとって時代を複写していることにほかならないんです」と、自身を「時代の並走者」と評する篠山紀信。そんな彼が映し出す「時代のドキュメント」を総覧する本展は、鑑賞者の世代を超えて、篠山独自の写真表現の奥深い魅力——「写真の魔力」を再認識する機会になるだろう。
- 展覧会情報
- 新・晴れた日 篠山紀信
会場:東京都写真美術館 2階・3階展示室
会期:2021年5月18日(火)〜8月15日(日)
観覧料:共通チケット1200円(65歳以上600円)
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
最寄り駅:恵比寿駅
HP: https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4019.html
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