身体にも地球にも優しい色素で「カラフルなナチュラルコスメ」を実現
オーガニックな野菜やフルーツを使った「LUSH」の秘密②
取材・文:出口夢々
オーガニックの野菜やフルーツを、フレッシュなまま加工し、化粧品として販売するLUSH。その製品は一般的なナチュラルコスメのイメージとは大きくかけ離れた、カラフルでポップなものばかり。そこで、商品のこだわりについてLUSH PRの小山大作さんに伺いました。
▼お話を伺った人
カラフルな化粧品で使うたびハッピーに
——前回の記事で「化粧品ビジネスを通して、この地球上にいる人間や動物、誰もがハッピーに自分らしく暮らせる社会になること」を願いに掲げたブランドだとおっしゃっていましたが、どのようにしてハッピーを体現しているのですか?
▼前回記事「みずみずしさにこだわりたいから、すべての製品をハンドメイド」
小山:まず、ハッピーであるスタッフを通じて商品が届くことで、お客さまをハッピーにできると信じています。スタッフすらハッピーでない企業が、お客さま、ひいては社会をハッピーにすることなんてできませんよね。
また、カラフルな色も人をハッピーにできると信じています。これまでお話した通り、LUSHの多くの商品が新鮮な原材料でつくられたナチュラルコスメです。「ナチュラルコスメ」と聞くと白や生成りのような、着色されていない色をイメージされますよね。企業のなかには、それらをイメージ戦略としているところもある言われています。でも、私たちの創立者は「ナチュラルコスメだからって、真っ白のものしかないなんてつまらないじゃない!」と考えています。「新鮮で、できる限りオーガニックな原材料にこだわりながらも、楽しくハッピーな気持ちで使えるようにカラフルな色の商品をつくりたい」と。
——どのようにしてカラフルな色合いを表現されているのですか?
小山:商品によって使用されている着色料は異なりますが、クチナシやパプリカといった自然由来の色素を使用することもあれば、自然由来の色素ではイメージしている商品がつくれない場合には、食用の色素など安全が確認されている科学的な色素を使用しています。
LUSHの商品のなかでもとりわけカラフルなのは入浴料の「バスボム」です。バスボムがお湯に溶けていくと、カラフルな色がバスタブ全面に広がります。バスボムがお風呂のお湯に溶けることで描かれる模様を「バスアート」と呼んでいるのですが、バスアートが広がると、それだけでいつものバスタイムが特別なものになりますよね。入浴料としての効能はもちろん、視覚からもハッピーになってほしい、そんな思いでカラフルな製品をつくっているんです。
小山:スキンケアやボディケアなど、肌に浸透させる商品は着色をしない、真っ白なものが多いです。ただし、色のついている原材料を用いている場合には、製品にも色がつきます。バラをミキサーにかけて使用するものはピンク色になりますし、ハーブを使用するものは緑色になっていますね。
——LUSHといえばキラキラ光る「ラメ」の入った商品が有名だと思いますが、ラメもナチュラルなものなのですか?
小山:はい。化粧品業界のなかでは、いまだにプラスチック由来ラメを使用している企業もあると言われています。ですが、LUSHではプラスチック由来のラメは一切使っていません。天然成分からつくられた、プラスチック不使用の合成マイカ(鉱物)を着色して使っています。なので、バスルームの排水溝から海へ流れても海洋生物に害を与えない成分になっています。ちなみにスクラブも、プラスチック由来のものではなく、塩や米粉、砕いたアーモンドや大豆、コーヒー豆など、食べられるものを細かくして使用しているんです。
10年間の試行錯誤を経てパッケージレスを実現
——LUSHではパッケージのない商品が多いですよね。なぜ、そのようなかたちで販売するようになったのですか?
小山:パッケージって、商品を使うときには「ゴミ」になってしまうものですよね。なので、可能な限りパッケージを使わずに商品を販売しています。LUSHには600種類ほどの商品がありますが、そのうちの約6割は固形の商品です。バスボムをはじめ、シャンプーやボディソープ、美容液も固形にすることで、パッケージなしの裸の状態で販売できるようにしています。それに、固形にすることによって、極めて少ない水分量で商品を製造できます。バクテリアや細菌は水のなかで繁殖してしまうので、水を使わないことで保存料を使う必要がなくなるんです。
小山:実は、パッケージなしでの販売を実現させるのには、10年近くかかりました。というのも、日本の法律では、成分表示などのラベルはきちんと商品に添付されてなければならない、というルールがあり、その障壁を超えるのに、それだけの時間が必要でした。日本では、成分表示のためにパッケージが使われ、今では商品がパッケージに包まれていることがあたり前になってしまっています。
ですが、先ほども述べたように、パッケージはいずれ「ゴミ」となるもの。なので、パッケージ包装なしで販売できる方法を見出すためにさまざまな方法を試しました。現在は、パッケージなしで商品を販売するために、商品そのものにラベルを貼り付けているのですが、行政の方にもご協力いただいて、トライ&エラーを重ねた結果、このような状態での販売ができています。
私たちの商品の主な材料である新鮮な野菜やフルーツは、豊かな自然環境が地球に存在しているからこそ採れるもの。気候問題が悪化し、これまであたり前に採れていた原材料が採れなくなってしまうと、ビジネスの存続が危うくなることも考えられます。そして、それ以前に私たちがハッピーに暮らせる環境でなくなってしまいますよね。なので「ハッピーな社会」を実現させるためにも、今あるあたり前に疑問を持ちながら、必要に応じてよりよく変化させていくことも私たち一人ひとりの責任かもしれません。パッケージなしで商品を販売するのも、その1つです。
小山:そのほかにも、化粧品業界における動物実験廃止に向けた取り組みを行ったり、サステナブル(持続可能)のその先の考え方としてジェネレーション(再生可能)の考え方を軸とした原材料調達など、「ハッピーな社会」を実現させるために、さまざまなことに取り組んでいます。
——ビジネスである以上、その姿勢を貫くのは非常に大変そうです。
小山:はい、現在の社会でビジネスとして生き残るには、効率化を図って大量生産を行い、原価を抑え、利益をあげることが重要視されていることが多いと思います。でも、私たちは、ビジネスを通して必要以上に莫大な利益をあげるよりも、ハッピーな社会をつくることに重きを置いています。もちろん、その分、ビジネスシーンにおいて悩むこともたくさんあります。ですが、そんなときには私たちが大切にしている「LUSHの信念」に沿った判断ができているかと、常に自分たちに問いかけているんです。私たちにとって、ハッピーな社会を実現させるための倫理観こそがビジネスの原動力になっています。
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「みずみずしさにこだわりたいから、すべての製品をハンドメイド」
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ラッシュは、新鮮な野菜や果物を使った100%ベジタリアン対応のナチュラルコスメブランドです。約9割の商品がヴィーガン対応です。エッセンシャルオイルを使い、動物実験をせず、最大限合成保存料に頼らない手作りのスキンケア、ヘアケア、バス製品などで健やかな肌や髪のために役立ちたいと考えます。倫理的な原料調達や環境に優しい商品開発を通じて、毎日をみずみずしく豊かにし、ビジネスと自然との共生をめざしています。
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