あたり前の毎日で「よろこび」を感じるのはどんなとき?
“ご縁主義” で広がるコミュニティ
取材・文:花塚水結
あたり前のようにすぎる毎日。そんな日々のなかでの「よろこび」について、ビジネスマナー講師や料理教室の先生を務めている、立花祐子さんにお話を伺いました。
ライフスタイルが大きく変化しつつも、仕事や家事をこなし、ときには追われる日々を過ごしてきた立花さん。そんな、ZIEL読者のみなさまと同世代の立花さんが、どのような「よろこび」を感じていたのでしょうか——。
新入社員がピシッと姿勢を正すときのよろこび
花塚:立花さんは、ビジネスマナーの講師として仕事をなさっていますが、仕事で感じる「よろこび」はありますか?
立花:ビジネスマナーは特に3〜4月にかけて研修が多いんですよ。
ただ、昨年と今年はコロナ禍の影響でリモートでの依頼が多かったので、お断りをさせてもらっていて。
花塚:どうしてお断りされているのでしょうか?
立花:ホスピタリティは、対面でこそのものだと思っているからです。講師側の発信だけで終わる研修にはしたくないんです。でも、きちんと感染予防対策をしたうえで対面の研修をさせてもらえるところもあるんですよね。こうした対応をしてくれるのは、本当にありがたいなと思っています。
あとは、まだ学生気分を持った子たちが新入社員として入ってきて、研修の2日間で背筋がピシッと伸ばす姿を見ると、とてもうれしくなりますね。
花塚:私も新入社員研修に行ったことを覚えています。たしかに、講師の先生に「背筋を伸ばす!」なんて言われて、「あ、社会人になったんだな」って自覚しました。
立花:私は怖い先生なので、研修生が少し態度がダレていると「それでも社会人かー!」とすごい勢いで喝を入れるんです(笑)。でも、ちゃんと聞き入れてがんばっている姿を見るのは、仕事の生きがいになっていますね。
花塚:大人になるにつれ「怒られる機会」ってなくなりますから、節目にいい喝が入るということですね(笑)
立花:そうそう、もう今は社内では怒れないようになっているでしょう。利害関係とか立場があるからね。「セクハラ」や「パワハラ」なんて言葉もあるから、「怒れない状況」があるのも事実。でも、人間って怒られないと堕落しちゃうのよね。だから、なんのしがらみもない第三者の立場である私が、怒っているの(笑)
花塚:ありがたい存在です(笑)
教えたレシピで「おいしい」と言ってもらえるよろこび
花塚:ビジネスマナー講師の傍ら、料理教室もやってらっしゃるんですよね。
立花:そうなんです。ただ、料理の専門家というわけではないので、最初はとても迷ったんですけどね。
花塚:どうして始められたのでしょうか?
立花:ビジネスマナーに来てくれる研修生の女性たちに、簡単なレシピを教えたのがきっかけでした。みんな、仕事して家に帰って料理しなきゃいけないでしょう。時間もないし困っている人が多かったんですよね。だから、研修終わりに5〜10分くらいで簡単にできるメニューを教えていました。そうしたら、レシピ目当てに研修に来る人や、「先生、料理本出してよ!」なんて言ってくれる人たちが増えてきて(笑)
花塚:研修のような、レシピ講座のような(笑)
立花:そうそう(笑)。私のレシピって、全部目分量なんです。「チャッと」入れてとか、「じゅー」って言っているあいだはかき混ぜておいてとか。何cc入れるなんて面倒だからやらないのよ。
花塚:そうやって教えてくれると、ズボラな人間からするととてもありがたいです。
立花:でも本だと、きっちり量を書かなきゃいけないでしょう?
「醤油は何cc! お砂糖は何g!」って。
花塚:編集者の立場からすると、そうですね……。細かな情報は欲しいところです。
立花:だから、できないなと思ったの(笑)。そうしたら「本が出せないなら料理教室をやってよ」ってみんなが言ってくれて。背中を押しに押してもらって、料理教室を始めたという感じかな。今では三男もアシスタントとして手伝ってくれています。
花塚:家族で行っている料理教室って素敵ですね!
生徒さんは若い方が多いのでしょうか?
立花:生徒さんは20〜70代の方まで幅広い方々がいらっしゃるの。そんなに年齢層の幅広いコミュニティってあまりないし、いろんな人と出会えてとても楽しく過ごしています。それに、教えたレシピを実践して「おいしい」と言ってもらえることが、何よりうれしいなと思います。
花塚:本当に幅広い年齢層の方々がいらっしゃるのですね!
先ほど、料理の専門家ではないとおっしゃっていましたが、料理の勉強はどうやってなさったんですか?
立花:母が料理好きだったので、結婚当初は毎日電話して教えてもらっていました。
結婚する前は、月曜から金曜までニュース番組のキャスターを務めていたので、本当に時間がなくて、目玉焼きすらつくったことがなかったんです。でも、プロ野球選手と結婚したから、栄養管理も兼ねて料理をやらなきゃいけないじゃない。それで料理の勉強を始めました。
料理教室の様子。わきあいあいとした雰囲気で進められる
花塚:スポーツ選手の奥様方って、みなさん料理の勉強をしたり資格を取ったりという話を聞くので、本当に尊敬します。
立花:そうね。特にうちは、子どもが男の子3人だったので、とにかく食べる量がすごくてね。お米は月に86kg消費していたし、洗濯も1日5〜6回と回していたの。だから、いかに素早く、安くて、おいしい料理ができるかを常に考えていました。
花塚:男の子のパワー、すごい……!(笑)
どんな “ご縁” も大切に
花塚:ニュースキャスターから専業主婦へ転身する際、「仕事ができなくなるなぁ」と落ち込むことはありましたか?
立花:いえいえ、なんの未練もなく仕事は辞めてしまいました。
キャスターをしていたとき、平日は朝11時前に出社して打ち合わせ、18〜18時半が本番、その後反省会して、家に帰えるのは22〜23時とか。土日は取材に行って……と、とても忙しかったんです。「そんな日々から解放されたい!」なんて思いもあったので、ポーンと辞めちゃいました(笑)
花塚:自分の時間がないと辛くなっちゃいますよね。
専業主婦になってからも自分の時間がなくなってしまうくらい、大変だったのではないでしょうか?
立花:そうね。結婚して、子どもが生まれて、生活が180度変わって、本当に大変だったこともありましたよ。3人の子どもはそれぞれスポーツをやっていたから、応援に駆けつけたし、主人のケアもあったしね。そのなかで本当にご飯つくって洗濯するだけの毎日だったかもしれないです。
でも、子どもが小学校や中学校に上がれば、ママ友ができるでしょう。なんせ、子どもが3人もいたから、いろんな人と友達になれたんです。日々は忙しかったけど、そうした “ご縁” がよろこびになっていましたね。
花塚:人と人とのつながりって、心の支えになりますからね。
立花:そうそう。長男が所属していた野球部のママ友と、今でも月に一度ランチ会をやっているんです。もう、今年で19年目くらいになりました。今はこのような状況になってしまったから集まれていないけど、早く集まれるようになれたらいいな、と思いますね。
花塚:今でも交流があるのですね!
立花:そうなんです。今やっている料理教室でも友達がたくさんできて、みんなで野球を観に行ったりとか、韓国旅行にも行ったんですよ。旅行に行ったのはコロナ禍になるギリギリ前だったから、あれから行けてないんですけど、また行きたいなって話もしていて。そういうコミュニティが増えて、本当にうれしいんですよね。
料理教室のメンバーとともに韓国旅行へ行ったときの様子
立花:料理教室のアシスタントでもある三男が韓国留学に行っていたこともあって、ツアーコンダクターをやってくれて。とっても楽しかったですよ。
花塚:三男さん、頼もしすぎる!(笑)
つながった場所から、コミュニティが発展して旅行にも行かれるとは、“ご縁” を大切にされているなぁというのがすごく伝わってきます。
立花:“ご縁” はとても大事にしているので、新しい誰かと出会えると、とてもうれしいですね。
人とのつながりだけではなくて、日々のよろこびってたくさんあるんです。孫が歩けるようになればうれしい。友達と行ったランチが美味しければうれしい。働いて得たお金で大好きなカバンやコートなどを買えばうれしい。大好きな韓国ドラマを観られるのもうれしい。なんてことない日々でも、楽しいことだらけです。
花塚:「よろこび」をたくさん感じられるって、とても素敵だと思います!
立花:そうですね。今日の取材も何かの “ご縁” ですから、今度料理教室にも遊びに来てください。
花塚:ズボラな私にでもできる料理、ぜひ教えてください!(笑)
みなさんは、どのようなときに「よろこび」を感じますか? ぜひコメント欄で教えてください。
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