ファッションは “常備薬”
スタイリスト・花本幸枝 × YouTuber・島崎真代 ファッション談義
取材・文:花塚水結
前回の記事では、グッドエイジスタイリストの花本幸枝さんに、60代の女性を素敵に魅せる+1ファッションアイテムを教えていただきました。
今回は、花本さんと前回記事モデルの島崎真代さんのファッション談義をお届けします!
ファッションは “常備薬”
島崎:私たち世代からすると、ファッションは “常備薬” になっている感じがします。
——じ、常備薬ですか!?
花本:朝起きたら着替えるでしょう。だから、ファッションって毎日のことなんです。ファッション1つで気分が上を向くし、新しい服を買うためには外に出なきゃならないから運動にもなるし、いいことづくめですね。
島崎:カフェに入ればずっとファッションの話がつきないですよね。銀座のコアビルや原宿のパレフランス、青山のベルコモンズなんかがオープンしたころに行っていた、なんて話もしましたよね。
花本:そうそう。私たち60代が若かった時代はバブル期だったから、お給料のほとんどを服に使っていた人たちがいっぱいいましたよね。本当に、ファッションが青春でした。
——羨ましい……!
花本:そんな青春時代を過ごしてきたけど、やっぱり結婚、出産をすると「奥さんらしい」格好や「母親らしい」格好をしなくてはならなかったんですよね。
島崎:縛られていましたね~……。派手な格好をしていると、まわりの人に言われたこともありました。
「素敵」と言われる私に
——派手な格好を制約されてから、島崎さんが「もう一度ファッションを楽しもう!」と思われたきっかけは何ですか?
島崎:グレイヘアにしてからかな。白髪染めをやめて、「ありのままの自分でいよう」と思ってからいろいろ弾けたかなぁと(笑)。それで、メディアにも取り上げられるようになってYouTubeも始めちゃったし。
花本:白髪染めをしないということは、若づくりをしないという意思表示でもありますからね。スタイリストをやっていていつも思うのは、現状把握が大事だということ。つまり、「老い」を受け入れることですね。
島崎:そうね。「若い」と言われる必要はもうありませんから。
花本:「若い」よりも「素敵」と言われたいですよね。そう思えるようになってから、気持ちがとても楽になりました。ずっとファッション業界で働いていたから、常に “トレンド” を取り入れないと、と思って、トレンドのデザインばかりを着ていて……。「若く見える=センスがいい」という風潮もありましたし。
でも、それをやめて、自分の好きなファッションをするようになってからは、「60代の私を魅せるファッション」があるなって気づきましたね。
——今の自分を素敵に魅せるファッションが大事と。
花本:はい。子どもたちが巣立って、夫婦2人になった今、やっと自分のためにファッションを楽しむことができるようになった人もいるんじゃないかと思います。そんな方たちにもっとファッションを楽しんでもらいたいなと。
「健康」にかかわる小物にはお金をかける
——今のお話を聞いていると、「おしゃれをすること」にブランクがある方もいらっしゃるのかなと思ったのですが、60代の女性が今よりファッションを楽しむためには、どうすればいいでしょうか?
花本:まずは、家着を充実させるといいと思います。今はコロナ禍でお出かけする機会が減っていし、60歳を過ぎるときちんとしたフォーマルな席って年に数えるくらいしかタイミングないじゃないですか。だからお出かけよりも家着にお金をかけると思います。それも、ユニクロとかで完璧なの。
——前回、島崎さんに着ていただいたのもユニクロでした。
花本:あのシャツなんて2900円(セール価格)だったでしょう? 1枚足すだけで、いくらでも着まわしできますよね。
島崎:シンプルだから小物も合わせやすいですしね。
花本:そうそう。そうやって、自分に合うベーシックなデザインの服を選んだら、後は装飾品を増やすといいですよね。
——アクセサリーやバッグですか?
花本:はい。服はベーシックなものでも、アクセサリーやバッグなどを変えればどうにでも見せ方を変えることができますし、収納にも大きなスペースを取らないですし。
後は、歳を重ねたら「健康」にかかわるファッションにお金をかけるといいと思います。私がいつも言っているのは、眼鏡ね。
——なるほど。眼鏡もファッションの一部として捉えるのですね。
花本:そう。やっぱりきちんと検眼して合うものをつくることが大事ね。特に眼鏡は顔まわりだから、華やかな印象になると思います。
それから、眼鏡と同じくらい大切なのが靴。足に合わないものを履いていると、ある日突然歩けなくなっちゃうの。
——そんなことがあるんですね……!
花本:よくあることなんですよ。
島崎:本当に、靴は大事だと思います。今、3cmのヒールでもきついと感じるし。
花本:私がおすすめしているのは、スニーカーとかトラックシューズ。今はインソールで高さを出せるものもあるから、歩いていて楽なものを選んでほしいです。
島崎:お買い物でたくさん歩いても、足が痛くならないですしね。
——お金をかけるポイントがわかれば、いくらでも楽しめそうですね。
花本:今の60代以上の女性は、潜在的にファッションが好きな方が多いと思うのよね。だから、みんなで弾けちゃいましょう(笑)
プロフィール
花本幸枝
1961年生まれ。大手アパレルメーカーでMDディレクターとして、新ブランド開発、大型店MDを担当。独立後は、ファッションにとどまらず、インテリア、呉服など他業種のリニューアルや新業態開発も行う。近年は「グレイヘアスタイリスト」として活動。雑誌やTV出演、トークショーを行いながら、パーソナルスタイリングのサービスも提供。現在は、グレイヘアにこだわらず同年代の女性たちが輝けるサポートを中心に、「グッドエイジスタイリスト」として活動。雑誌『素敵なあの人』(宝島社)にて「おしゃれの方法論」を連載中。ファッションブログも毎日更新中。
花本幸枝オフィシャルサイト、ブログ、Instagram、Facebook
島崎真代
20~30代はアパレルブランド販売に従事、40代はデザイナー秘書、50代でイギリスアンティークショップを営み、常にファッション関係で過ごし、今にいたる。YouTubeチャンネル「VIVA 美婆チャンネル」は登録者数1180人(3月31日現在)を誇る。
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