「原稿」を書くときに気をつけたい5つのポイント
原稿執筆歴5年目の編集部・出口がお届け
文:出口夢々
「自伝をまとめてみたいけど、書き方がわからない」「原稿を書くときのポイントがわからない」などのお悩みをお持ちのみなさん。その気持ち、とってもよくわかります……。経験のないことを行うのに、試行錯誤はつきものですよね。そこで、原稿執筆歴5年目に突入しようとしている編集部の出口が、試行錯誤の結果行き着いた、原稿を書くときに気をつけている5つのポイントをシェアします!
▼「自伝」に何を書くかを悩んでいる方はこちらの記事をチェック
1.文体を統一する
1つ目のポイントは、「文体を統一する」こと。これは基本中の基本ですが、決めずに書き始めてしまいがちなポイントです。「だ・である調」か「です・ます調」、どちらで書くかを決めましょう。
「だ・である調」は、読み手に断定的な印象を与えます。例を用いて見てみましょう。
「当時、私は20歳だった。地方から上京してきた私にとって、美術館や博物館は “非日常” な空間だった。知識も経験もない。でも、博学な彼と楽しい会話をしたい——その一心で、私は1人、美術館に通い詰めた。」
物悲しいエピソードですみません……。これは20歳のころの私の心境です。当時好きだった人が美術への造詣が深かったんですよね。彼の好きなことを私も知りたい。そう思い、美術館へ足繁く通っていました(懐かしすぎ)。
このように「だ・である調」で書くと、独白的な印象が強くなります。文章を読むと、かなり思い詰めている私の姿が想像できますよね。
では、同じ文章を「です・ます調」で書くとどうなるでしょう。
「当時、私は20歳でした。地方から上京してきた私にとって、美術館や博物館は “非日常” な空間です。知識も経験もありません。ですが、博学な彼と楽しい会話をしたい——その一心で、私は1人、美術館に通い詰めました。」
先ほどとは打って変わって、少し親しみやすさを感じられる雰囲気がありませんか? 思い詰めていた私ではなく、「彼に好かれたい」という乙女心を持ち合わせた私の姿が想像できるかもしれません。このように、「です・ます調」は内容をやわらかく見せる効果があります。また、読み手に語りかけるような印象も与えられます。
私が普段本をつくるときは、その本のテーマに合わせて文体を決めています。ビジネス書であれば論理的な内容を扱うので「だ・である調」を、エッセイであれば人となりがより伝わりやすい「です・ます調」を選ぶことが多いです。
ただし、自伝を書くときはどちらでもよいと思います。ですが、「自分の思いや経験を本に昇華させたい」と思って書くのであれば「だ・である調」を、「自分の思いをお世話になっている人たちに伝えたい」と思って書くのであれば「です・ます調」を選ぶのがおすすめです。自分の思いと、読み手に与えたい印象を考えて、決めてみてください。
2.一文が長くなりすぎないようにする
2つ目のポイントは、「一文が長くなりすぎないようにする」こと。これは私がよく上司に注意されることですね……。自分の思いを正確に記したいと思うと、どうしても装飾が多くなって文章が長くなってしまうんです(言い訳)。細かく描写をしたほうが伝わりやすいと思いますし。でも、それ、意外と誤りなんです。一文を短くしたほうが、読んでいるときに得られる情報が少なくなります。そうすると、内容を理解してもらいやすいんです。
例を見てみましょう。
「当時20歳だった私は、地元から上京してきたばかりで、美術館や博物館は “非日常” な空間でした。知識も経験もありませんでしたが、博学な彼と楽しい会話をしたいという一心で、私は1人、美術館に通い詰めたのです」
「当時、私は20歳でした。地方から上京してきた私にとって、美術館や博物館は “非日常” な空間です。知識も経験もありません。ですが、博学な彼と楽しい会話をしたい——その一心で、私は1人、美術館に通い詰めました。」
結果は一目瞭然ですね。私のように言い訳をする前に、みなさん一文は短くしましょう。実際に書く際は、ついついのめり込んで一文が長くなりがちです。意識して短く書くのがむずかしければ、推敲する段階で短文に修正するのがおすすめです!
3.第三者が読んでもわかる内容にする
3つ目のポイントは、「第三者が読んでもわかる内容にする」こと。「いや、本にするんだから当たり前でしょ!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これが意外と盲点なんです!
文章を書いていると、執筆に没頭して、つい、まわりのことを忘れがちになってしまうんです。自分の過去や思いと向き合いながら書く自伝なら、なおさらのこと。自分の内面に入り込んでしまうと思うので、適宜読み直して、誰もが理解できる内容になっているかを確認しましょう。
また、あまり一般的ではない固有名詞は使わないようにしたり、エピソードに時代背景を加えるのもおすすめです。書き手と読み手との共通知識を同レベルにできるので、理解を促しやすくなります。
4.同じ言葉を何度も使わない
4つ目のポイントは、「同じ言葉を何度も使わない」こと。一段落のなかで何度も同じ言葉・表現が用いられると、読みにくさにつながります。そして何より、かっこよくない!
ここでも例を用いて確認してみましょう。
「彼の影響で美術が好きになった私は、なんと、フランスのルーブル美術館にまで足を運んぶようになりました。ルーブルに並ぶのは、華やかな作品ばかり。絵画部門に関しては、その華やかさがより顕著になります。絵画自体はもちろん、それを縁取っている額縁も華やかで、豪華なのです」
……お前は何回「華やか」って言えば気が済むんや。と思わず心のなかでツッコみたくなる文章ですね。ルーブル美術館にある作品はもちろん華やかで、私たちを圧倒するものばかり。ですが、この文章自体の表現に気を取られて、美術館へ思いを馳せるゆとりが失われてしまいます。書き直しましょう。
「彼の影響で美術が好きになった私は、なんと、フランスのルーブル美術館にまで足を運ぶようになりました。ルーブルに並ぶのは、赫々たる作品ばかり。絵画部門に関しては、その麗らかさがより顕著になります。絵画自体はもちろん、それを縁取っている額縁も意匠が凝らされていて、豪華絢爛なのです」
先ほどの文章で感じられた幼稚さが消滅して、どことなくかっこよさのある文章になりましたね!
「えっ、でも言葉を使い分けるのはむずかしそう」と思った方に、朗報です。「weblio」というサイトなら、簡単に類語を調べられます(実は、私も毎日使っています)。履歴に「華やか」とありました。こんな風に結果が出ます。
知っているけど、執筆中には思いつかなかった類語が載っていますね。言葉を置き換えるだけで一気に読みやすい文章になるので、一度検索してみてください!
5.体言止めを多用しすぎない
5つ目のポイントは、「体言止めを多用しすぎない」こと。体言止めは、とりわけ強調したい内容のときに用いると、印象的な文章になります。ですが、多様は厳禁。強調だらけの文章になってしまって、何が大事なことなのかがわかりません。ついつい使いがちな表現なので、注意してみてください!
「館内に所狭しと並べられた名画たち。その前に群がる鑑賞者。一際多くの人を引き寄せていたのは、モナリザだ。レオナルド・ダヴィンチによって描かれたモナリザは、多くの謎があることから、人々を魅了してやまない作品。吸い寄せられるようにモナリザの前に立った私は、瞬時に思った——あれっ、小さくない?と」
臨場感を出そうと最初から体言止めを多用していますが、強調ばかりでよくわからない文章になっていますね。修正しましょう。
「館内には、名画たちが所狭しと並べられていた。各作品には鑑賞者が群がっている。そんななか、一際多くの人を引き寄せていたのは、モナリザだ。レオナルド・ダヴィンチによって描かれたモナリザ。多くの謎があることから、人々を魅了してやまない作品である。吸い寄せられるようにモナリザの前に立った私は、瞬時に思った——あれっ、小さくない?と」
体言止めを修正すると、自ずと言葉が増えて読みやすくなりましたね。モナリザに、よりフォーカスのあたる文章になりました。ちなみに、モナリザは本当に小さかったです。
原稿を書くときのポイントを5つ紹介しましたが、いかがでしたでしょうか? これらのポイントは、どれも私が今もなお気をつけていることです。きれいで読みやすい文章を書くのはむずかしいですが、少しでも参考になれば幸いです!
自伝を書こうと思ったら、まずはこちらの記事を読んでみてください!
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