自分を甘やかしたいときに食べたい、オートパティスリー(高級菓子)
お菓子を愛してやまない編集部・出口が選びました!
文:出口夢々
学生時代、オートパティスリー(高級菓子)に位置づけされるピエール・エルメ・パリでのアルバイト経験があり、ケーキ屋さんめぐりが趣味の編集部・出口。そんな私、出口が、ひそかに自分を甘やかすときに食べていた珠玉の洋菓子を、みなさんにご紹介します! どれも公式サイトから購入できるので、おうち時間にもぴったりです。
チョコレートとフランボワーズが奏でる「濃厚」なハーモニー
ピエール・エルメ・パリ
「ケーク クロエ」(税込2592円)
みなさんにどこのお菓子を紹介しよう……と考えたとき、一番最初に頭に浮かんだのが、ピエール・エルメ・パリ。独創性溢れる、芸術性の高いケーキをつくることから、 “パティスリー界のピカソ” と評されるピエール・エルメ氏が立ち上げた、フランスのブランドです。
見た目の美しさが際立っているのはもちろん、「いちごとわさび」や「サフランと白桃」など、エルメでしか味わえない食材の組み合わせが堪能できるパティスリーばかり。私は大学生のころ、2年間ほどエルメでアルバイトをしていました。酸いも甘いも噛み分けることなく、ただただ甘いだけの日々を過ごしていた19歳。そんな小娘にとって、その複雑な味の組み合わせは、日々驚きを与えるものでした。
一方で、シンプルこそ至高と言わんばかりのストレートな商品もあります。「ピスタチオのホワイトチョコレートガナッシュ(マカロン ピスターシュ)」や「ジャスミン風味のホワイトチョコレートガナッシュ(マカロン アンフィニマン ジャスマン)」は、なんとなくの味の想像がつきますよね。
ですが、バルサミコ風味のホワイトチョコレートガナッシュと、いちごのコンポートがサンドされたマカロン「フラゴラ」や、サフランと白桃のホワイトチョコレートガナッシュがサンドされたマカロン「エデン」などは、正直、説明文を読んでもまったく味の想像がつかず脳内が「???」と、はてなで溢れていました。
でも、一口食べてみると、その疑問は一気に吹き飛びます。独特だけど、「おいしい!」と思わされるポイントが実に巧みに仕込まれているのです。その巧みさに導かれ、私たちは不思議な味の虜に……。なので、エルメのお菓子を1個食べるだけで、一気に “非日常的な体験” ができます。「今日は贅沢な気分に浸りたいな」なんて日におすすめのブランドです。
エルメと聞くと、「マカロンのお店だ」と思う人もいるかもしれません。たしかに、エルメ氏は「マカロン人間」と呼ばれるほどマカロンに情熱を傾けている人物。実際、私も「マカロンはエルメ以外のものは食べたくない」と思ってしまうほど、エルメのマカロンは美味しいのです。
しかし! 今日は、あえてマカロンではなく、パウンドケーキを紹介させてください。というのも、私は、珍しくシンプルな味の組み合わせが多い、エルメのパウンドケーキも愛してやまないのです!
「ケーク クロエ」は、ほどよい酸味のフランボワーズと、芳醇な香り漂うビターチョコレートのパウンドケーキ。わさびやサフランなど、意外性のある食材は使われていない、シンプルなケーキです。ですが、十分に “非日常的な体験” ができます! その秘訣は、表面のうねうねっとした部分にあるのです。
『風の谷のナウシカ』に登場する王蟲を想起させる、この部分はすべてチョコレート。このチョコレートの部分が、もったりとしたなめらかさで、食べ応えもあって、とてもおいしいんです! なので、少しお行儀が悪いですが、パウンドケーキの真上から下まで、フォークで一気に突き刺して、そのまま口に運んでみてください。まず訪れる、フランボワーズとビターチョコレートのマリアージュによる幸せな時間。そして、粒子の細かい、なめらかなチョコレートと、フランボワーズの硬い種子が織り成す、独特の食感による愉悦……最高です!
「切り分けずに、フォークでそのまま食べるなんて抵抗がある」という方は、厚さ3cmくらいに切り分けて、ケーキの断面が天井を向くようにお皿にのせてください。そして、すべての層が一気に口に入るようにフォークですくい、そのまま口へ。すると、風味や食感を十分に堪能できるだけでなく、ケーキ自体の濃厚さや重みも味わえます。
決してケチケチしてはいけません。せっかくの “非日常的な体験” なので、ここは贅沢に食べましょう。互いの香りを引き立てるために、酸味のあるコーヒーと合わせて食べるのがおすすめです。
▼ここで買えます!
「Saint Varentine 2021」をクリックすると「ケーク クロエ」があります!
https://www.pierreherme.co.jp/
かろやかな「口あたり」のガナッシュがたまらない!
ジャン=ポール・エヴァン
「トリュフ ドゥ トリュフ(6個)」(税込2344円)
チョコレートつながりで、次はジャン=ポール・エヴァンの商品を紹介します。
「奇抜な味の組み合わせよりも、馴染みのあるものを食べたい。でも、いつもとは違うチョコレートを食べたい」そんな人におすすめなのが、エヴァンのトリュフです。
「エヴァンのトリュフ」。聞いただけで(そして、この原稿を書いているだけで)、よだれが出てきそうになります……。ジャン=ポール・エヴァンは、フランス国家最優秀職人章(通称MOF)を受領したジャン=ポール・エヴァン氏のブランドです。フランス国家最優秀職人章とは、日本で言えば、いわば人間国宝みたいなもの。スイーツ大国フランスの宝とも言えるショコラ界の重鎮である、エヴァン氏。そんな人がつくったシンプルなトリュフが、おいしくないはずがない。というか、おいしくてしかたないんです!
私はパリに1年間留学していたことがあるのですが、勉強がひと段落ついたらお菓子屋さんめぐりをするのを息抜きにしていました。エヴァンにも、たくさん足を運んだものです。そして、フルールの風味がするガナッシュが入ったショコラや、コーヒー風味のプラリネが入ったショコラなど、たくさんのボンボンショコラの食べ比べをしていました。そんななか「やっぱりこれが一番おいしいな」と行き着いたのが、このトリュフなのです。1年間の留学の最大の成果は、「エヴァンのトリュフが一番おいしい」——この発見にあると言っても過言ではありません。
1つ口に入れると、トリュフがまとっている芳しいカカオパウダーの香りが、身体のすみずみまで染み渡ります。そして、噛むとパリッと音をたてて割れるチョコレートコーティングのなかから、溢れ出てくる濃厚なガナッシュ。このガナッシュが、濃厚なのに、ふんわりとした、かろやかさがあってたまらないのです。
濃厚なのに、かろやか。一見、相反するように思いますが、この不思議な感覚が私たちを襲います。「6つで2344円だから、1つ大体390円もする……。大切に食べないと……」とも思うのですが、あまりの不思議でおいしい出来事に、トリュフへ伸ばす手が止まりません。一度にたくさん食べれてしまうトリュフなのです。
そして、「カカオパウダーの香りを感じる」→「コーティング用のチョコが音を立てて割れる」→「なかからガナッシュが溢れ出る」。この一連の体験は、至福のときをもたらします。さっきまでの憂鬱な気分も溶けてなくなってしまいそう。味もさることながら、この体験をするために、エヴァンのトリュフを食べていると言っても過言ではありません。
エヴァンのトリュフを召し上がるときは、ぜひ、ホットコーヒーなどの温かい飲み物で口のなかをあたためてから食べてみてください。高くなった口内の温度で、チョコレートの “とろん” とした食感が倍増します。ちなみに、ナッツの風味のする酸味のまろやかなコーヒーを合わせて食べると、ガナッシュのまろやかさを存分に満喫できます。ああ、食べているときを想像しただけで、うっとりとした気分になってきました……。
▼ここで買えます!
「ショコラ」をクリックすると「トリュフ6個」が買えます!
https://www.jph-japon.co.jp/
しっとりとした「食感」で一気に昇天
ルノートル
「マドレーヌ エ フィナンシェ(10個)」(税込3672円)
次は、ルノートルからマドレーヌとフィナンシェの詰め合わせを紹介。
マドレーヌやフィナンシェは、町のお菓子屋さんやスーパーでも手軽に購入できる、シンプルな洋菓子です。ですが、シンプルだからこそ、素材の味や焼き加減が重要になってくる。そして、少しでもそれらが損なわれていたら、食べた瞬間に悲しくなってしまう、そんなお菓子だと私は思っています。しかし、ルノートルのものは、口に入れた瞬間に、風味豊かな素材の味を堪能できる逸品です。
バニラの甘い風味のなかで柚子やレモンの爽やかな香りがふんわり漂う「マドレーヌ ナチュール」。口に近づけた瞬間から香り高いカカオの風味を楽しめる「マドレーヌ ショコラ」。アーモンドのまろやかなコクと、外はさっくり、中はしっとりした食感がたまらない「フィナンシェ ナチュール」。口内が一気にピスタチオの芳醇さで支配されるような感覚に陥る「フィナンシェ ピスターシュ」。これら4種類の焼き菓子が入った「マドレーヌ エ フィナンシェ」のセット。
どれも、「ふんだんによい素材の油分が使われているな」と思わされる、しっとりとした食感。小麦粉の粉っぽさを一切感じさせない、素材の一体感を味わえる舌触りで、おいしい。シンプルだけど、抜け目なくつくられた職人の技術を感じられる焼き菓子です。ああ、素晴らしい!
とりわけ私が好きなのが、「フィナンシェ ピスターシュ」です。正直なところ、ピスタチオの商品と謳っていても、あまりピスタチオの存在を感じられなかったり、コクが足りなかったりするものが多いなという印象があります。しかし、このフィナンシェは、期待どおり、いや、期待以上にピスタチオの香りや食感を楽しめる。
フィナンシェ生地に入っているであろうバターやナッツのコクとピスタチオが相まって、ピスタチオをそのまま食べている以上にピスタチオを感じられるのです。鼻から抜けるピスタチオの濃厚な風味もたまりません。さすが、 “フランス菓子界の父” と呼ばれるガストン・ルノートル氏が立ち上げたブランドのお菓子です。
ちなみに、これらの焼き菓子を食べるときは、花の香りが高い紅茶と合わせるのがおすすめ。焼き菓子からしっかりとした素材の味がするので、香り高い紅茶でも負けず、紅茶の香りも引き立ちます。
▼ここで買えます!
「商品カテゴリー」から「ギフト」をクリックすると「マドレーヌ エ フィナンシェ」があります!
https://shop.lenotrejp.com/
フランス菓子の「伝統」が詰まったボックス
AU BON VIEUX TEMPS
「Petits fours secs S」(税込2950円)
東京都世田谷区にあるAU BON VIEUX TEMPS(オーボンヴュータン)からは、小さな焼き菓子の詰め合わせ「Petits fours secs」を紹介。
洋菓子好きなら誰もが一度は食べてみたいと言うAU BON VIEUX TEMPSのお菓子。その理由は、お店の歴史にあります。AU BON VIEUX TEMPSのオーナーシェフを務めているのは、河田勝彦氏。
河田氏は、1960年代に渡仏。海外でお菓子づくりの修行をするのがまだ珍しかった時代において、10年間にわたりパン屋やパティスリーで学び、その技術を日本へ持ち帰った、日本におけるフランス伝統菓子の第一人者なのです。
そんな河田氏が1981年にオープンさせたのが、AU BON VIEUX TEMPS。AU BON VIEUX TEMPSでは、河田氏がフランスで学んだ味を日本人の口に合うようにつくられているわけではなく、本場の伝統的な味を表現することをテーマにつくられています。そのため、どのお菓子もフランスのクラシックな雰囲気が閉じ込められた逸品。まさに、「フランス菓子の荘厳さ」を体現しています。
素朴ながらも着実なおいしさがある焼き菓子は、一口食べるだけでフランス伝統菓子の威厳を感じられます。赤スグリのジュレがのったサブレや、メレンゲなど。詰められている焼き菓子はシンプルですが、その堅実さと滋味深い味わいに、思わず黙って食べてしまう、そんなお菓子です。
機会があったら、ぜひ、店舗にも足を運んでみてください。フランスの伝統菓子が所狭しと並べられていて、その様子はまるでフランス菓子の博物館。そのうえ、中世に建てられた教会のような厳かな雰囲気もあって、日本でフランス菓子を伝播させた者の覚悟や気迫のようなものも感じられます。
ちなみに、お菓子だけでなく、河田勝彦氏の息子、河田力也氏がつくるシャルキュトリ(ハムやソーセージ、パテ、テリーヌなど)も絶品です!
▼ここで買えます!
「Produit/商品」をクリックすると「Petits fours secs S」があります!
https://aubonvieuxtemps.jp/
8種類の「個性」が楽しめるチョコレート
ヴァローナ
「コフレ・デギュスタシオン」(税込3402円)
最後に紹介するのは、チョコレートブランド、ヴァローナのタブレットセット「コフレ・デギュタシオン」です。
正直、最後に何を紹介しようか、かなり悩みました。目に入るだけで童心に返れるような色鮮やかでかわいいマカロン。宇宙のような見た目で複雑な味のするボンボンショコラ。フランスのアルザス地方で丁寧につくられているジャム。そのようなたくさんの候補のなかから選んだのが、この、ヴァローナのタブレットです。
ヴァローナは、1922年にフランス、ローヌ地方で創業した歴史あるチョコレートブランド。最高品質のカカオ豆を仕入れてつくるヴァローナのチョコレートは、ピエール・エルメ・パリなどの、世界のトップ・パティシエたちに愛されています。シンプルなタブレットではありますが、そんな名実ともに素晴らしいチョコレートをみなさんに食べてみてほしいと思い、こちらを紹介することにしたのです。
「コフレ・デギュタシオン」は、ブラック・チョコレート6種類とミルク・チョコレート2種類、計8種類のチョコレートを楽しめるアソートセットです。
箱を開けただけで漂う「香り」に包まれて、至福の時間を味わうこと5分。その幸せを感じさせるのは、フローラルな香りのする「マンジャリ 64%」。そして一口、口にすると広がる、ナッツのような豊かな味わいが魅力の「カライブ 66%」。力強い苦味のする「アビナオ 85%」。
どれも「ブラックチョコレート」に分類されるものですが、カカオの種類やカカオ分のパーセンテージによって香りや風味は千差万別。2種類のミルクチョコレートも、ミルクのコクによってカカオ豆独自の風味や香りが引き立てられています。
私が好きなのは「マンジャリ 64%」。「ケーク クロエ」の味わいのように、「マンジャリ 64%」もフランボワーズのような酸味が感じられるチョコレートなのです(要するに、私はベリー系の酸味とビターチョコレートの酸味の組み合わせに目がないんです!)。
自分の好きな味の組み合わせが見つかると、はじめて行くお菓子屋さんでも自分好みのお菓子を外すことなく買えるようになったり、「今日はこんな味の組み合わせのケーキが食べないな」などと、自分の食べたいお菓子の味を明確に想像できるようになります。すると、行動の選択肢が広がるんです。
ただ、お菓子を食べて終わりなのではなく、自分好みの味を見つけてほしい。そんな思いで選んだのが、「コフレ・デギュタシオン」なのです。ですので、ぜひ、お腹の空いているときに全種類を食べ比べして、自分の好きなチョコレートを見つけてみてください。
▼ここで買えます!
「コフレ」をクリックすると「コフレ・デギュタシオン」があります!
https://boutique.valrhona.co.jp/
疲れも吹っ飛ぶ美味しさのお菓子を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか? 少しお値段は張りますが、「今日は自分を甘やかしてあげよう」なんて日に、ぜひ、召し上がってみてください! コメント欄では、みなさんの好きなお菓子を教えてくださるとうれしいです!
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