FP(ファイナンシャルプランナー)という職業に馴染みのない人もいるかもしれませんが、お金のよろず相談所をイメージするとわかりやすいかもしれません。個人のライフプランに合ったお金の使い方や増やし方を提案しています。アメリカでは「弁護士と医者、そしてFPの人と友人関係を築くと人生がうまくいく」といわれるほど、みなさんの暮らしと密接した重要な職なのです。
FPと一言でいってもさまざまな人がいますが、私は①住宅購入、②生命保険、③老後・介護保険、④教育資金の、4ジャンルの相談を受けることが多いです。
終活世代の方々からは生命保険と医療保険についてよく相談を受けるのですが、生命保険は入っておくに越したことはありません。
というのも、“争族”を防ぐために生命保険は有効だからです。生命保険金は、税法上はみなし相続財産として相続税の課税対象に含める位置づけですが、民法上は受取人固有の財産とされているので、相続税を支払う前に保険金を受け取れます。
相続財産が土地と家だけの事例で考えてみましょう。首都圏の場合、地価が高いので相続税の控除額や小規模宅地等の特例などを活用しても納税義務が発生するケースが多々あります。
しかし、現金がないとその相続税は支払えませんよね。土地と家を売って現金化してから相続税の納税手続きを行えば解決できますが、相続税の申告・納税義務は、相続する事実を知った翌日から10カ月以内。四十九日を過ぎてから相続について考え始めた、というようなケースでは、買い手を見つけて売却し、現金が手元に届くのを待っているうちに、申告期限が過ぎてしまう可能性が少なくありません。
ですが、そのようなときに被相続人が生命保険に加入していれば、遺族が相続税の納税資金として現金を用意するのに右往左往する必要がありません。つまり、生命保険は子どもや配偶者といった、遺された人のために加入しておくべき保険なのです。
生命保険と同様に、遺された人のために入っておくべきは、葬儀保険(葬儀費用を目的とした生命保険)です。亡くなった人の銀行口座は、銀行がその事実を知った途端に凍結されてしまいます。
手続きをすれば凍結された口座から葬儀費用を引き出せるのですが、死後からお葬式まではやらなければならないことが多く、手続きをするのもなかなか難しい実状があります。また、手続きに慣れていない金融機関の場合は、申請してから現金が手元に届くまでに時間がかかる可能性もあります。
ですが、保険金であれば、被保険者が亡くなってからすぐに手続きすれば、受け取るまで時間がかからず、お葬式前に保険金を受け取ることも可能です。そのため、相続対策の生命保険とは別に葬儀保険にも入っておくことで、遺された人がキャッシュ不足にならず、安心してお葬式を執り行えます。
医療保険は、実をいうと高齢であれば入らなくてよいかなと思うケースも多いです。年齢が高くなると公的保険での自己負担額が少なくなるので、通院や入院するとしても支払う金額はそんなに高くないのです。なので、貯蓄があれば病気にかかったとしても問題ないケースがほとんどです。
ですが、保険に入っていないと不安という方が多いのも事実。最近は持病があっても、高齢でも入れる保険が増えているので、費用対効果があれば入ってもよいでしょう。
また、最近人気が高いのが認知症保険です。
介護保険は「加入したら要介護状態になってしまうのではないか」と思う人が多く、加入率はそんなに高くないのですが、認知症保険は、4人に1人が完治するといわれているMCI(軽度認知障害)になっても保険金が給付されたり、高齢者に多い骨折でも保険金が給付されるプランが多いので、非常に人気なんです。認知症になる恐れは自分にもあると思って加入する人が多いのだと思います。
医療保険や認知症保険は相談に来た方が加入を希望しているのであれば、そのほうが提案された保険商品のメリット・デメリットを説明させていただきます。ですが、外貨建て保険に関してはおすすめしません。外貨建て保険は解約しにくく塩漬けになりやすいので、高齢者向けの商品ではないのです。
また、残念ながら、加入していれば必ずお金が増えるわけでもありません。すでに加入してしまっている方が相談に来られた際には、出口戦略を一緒に考えます。解約時に損しないような方法をいくつか提案するのです。
生命保険や火災保険に加入している場合は、その旨を必ず家族全員に伝えておきましょう。保険会社名と加入内容まで伝えられたらベストです。
できることなら保険証券をしまっている場所まで教えておくと万が一のときに家族が対応しやすいのですが、抵抗がある人も多いでしょう。そのような場合には、しまってある場所のヒントを暗号化して残しておきます。もちろん暗号を解読できなかったら意味がないので、家族だけがわかる内容にするのがおすすめです。
遺される人に伝えたいことは、エンディングノートや遺言書にまとめておきましょう。誰かの葬儀に参列したときや、古希を迎えたタイミングなど、「死」を意識したときに軽い気持ちで自分の死後にも向き合うと書きやすいかもしれません。
終活は先手必勝。できるときにできることを行えば、自分に残された時間も、遺される人の時間もより有意義なものになります。
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