若手編集者みゆももが初挑戦!「陶芸」って奥が深い!(後編)
目指せ、喜美ちゃん! 不器用2人組が新たな扉を開ける
取材・文:花塚水結
NHKの連続テレビ小説『スカーレット』で、主人公のモデルとなったのは、陶芸家の川原喜美子さん。毎朝15分、陶芸家として邁進する主人公の姿を見て、何となく「陶芸いいなぁ」と思った人も多いのではないでしょうか。
そんな陶芸を編集部の2人が体験をしてきました。前半では陶芸の体験記をレポートしましたが、後編では陶芸の魅力を聞きました。前編はこちら
焼き上がりまで完成形が見えないところに陶芸の奥深さがある
花塚:体験、ありがとうございました。
ここからは、陶芸や先生についてお話を聞かせてください。
西村:はい。何でも聞いてください。
花塚:今日の1日体験ではなかなかうまくはできませんでしたが、「自分の手でものをつくる」という感覚がとても楽しかったです!
先生が感じる、陶芸の魅力とは何ですか?
西村:うーん、そうですね……。
陶芸は年齢問わず、誰でもできると思うんです。小さい子どもでも粘土で好きなようにかたちづくりをしますよね。陶芸も自分の思い描くかたちを土で表現するという点は、子どものの粘土いじりと同じ。
しかし、入り口は同じでも、奥の深さに違いがある。「表現する」ということについて、いまだ私も先が見えません。
花塚:どのようなところが奥が深いと感じますか?
西村:焼き上がりまで作品の完成形が見えないところです。
ガラス細工は、つくりながらリアルタイムでかたちが変化し、その変わりゆく様を見ることができる。でも、陶芸は焼き上がるまで模様すらわからないことがあるんですよ。
花塚:前編でも、還元という焼成方法では窯に置く位置を変えるだけで、土肌の表情が変わるとおっしゃっていましたもんね。
西村:はい。なので、自分がイメージする作品をつくろうと思っても、なかなかできなかったりします。
だから、陶芸家でも自分のカラーを思いどおりに出すのはむずかしいです。
花塚:なるほど……。私が今日つくったのは、模様も何もないどんぶりですけど、とてもむずかしかったです。
突然ですけど、先生の作品を見せてもらうことはできますか?
西村:いいですよ。
花塚:ありがとうございます!
西村:どうやってつくったか、わからないでしょ(笑)
花塚:(模様が細かくてすごい……)たしかに。どうやってつくったのか、まったくわからないです。
西村:そこがポイントなんですよ。作品を見ただけではつくり方が分からないようなね。
花塚:一目見ただけではわからないつくり方が、自分だけのカラーになっていくんですね。
西村:そうかもしれないです。
花塚:先生の作品は白を基調とされているんですね。
西村:実は、これは「陶器」ではなく「磁器」なんですよ。
花塚:磁器とはなんですか?
西村:簡単にいうと、仕上がりが白っぽいものです。
ただ、磁器は作品の雰囲気が少し冷たい印象を与えると思っているので、釉薬を使わないんです。釉薬を使わないと、粉雪のような柔らかさが出る気がしていて。
花塚:たしかに。作品に使われているパステルカラーが、磁器の白色と調和していて、柔らかい印象を受けます。
西村:こういう方法でつくっている人いるのかな……?(笑)
いるのかもしれませんけど、まぁ、こうやって私なりのオリジナリティを出してますね。
花塚:色やつくり方を知れば知るほどに、奥が深そうだなと感じます。
初心者でも、先生のような作品をつくれるようになりますか……?
西村:むずかしいんじゃないかなぁ(笑)
そもそも、私のような作品をつくれるかどうか以前に、うちの陶房では先生の色があまり出ないように教えているんです。
花塚:なぜですか?
西村:生徒さんはあくまでも習い事です。生徒さんや体験に来てくれる人たちには、ほかの作品にとらわれず、自由に楽しくものづくりをしてほしいと思っているので、自分やほかの先生の色が出すぎないように教えているつもりです。
花塚:なるほど。
西村:先生の経験と知識だけで教えていると、なんとなく生徒さんの作品が先生に似てきてしまうこともあるんですよ(笑)
花塚:生徒さんは先生の真似をしますからね。
西村:そうなんですよね。だから、うちの工房では浅く広く、隔月ごとに技法講座を開いてたくさんの技法を教えています。徐々に技術も上達して、いろいろな技法も知ってもらうと陶芸の幅も広がって楽しさも増してくると思います。そこがほかの陶房とは差別化になっている点かもしれません。
陶芸は生活を楽しく、豊かにしてくれる
花塚:今日の体験でも、自分の希望どおり自由につくらせていただきました!
陶芸は「むずかしそうだな」というイメージが強かったんですけど、「陶芸をやってみたいな」という気持ちがあれば、誰でも始められるなと思いました。
西村:はい。陶芸を始めるきっかけは、なんでも構わないと思います。手を動かしてみたいとか、ものをつくってみたいとか、それこそ暇つぶしとか。
でも、続けようとすると、モチベーションがないとむずかしいかもしれません。
花塚:モチベーションというと?
西村:たとえば、「自分でつくった食器で食事をしたい」とかね。いつもの食事でも、自分でつくった食器で食事をすると日常生活に彩りを添えられます。
それから、「家に友達を呼んでつくった食器でおもてなししたい」というのもいいと思います。漠然としていても、こういう目標をもっている人は、ぜひ陶芸をやってみて欲しいなと思いますね。
花塚:誰かに見せようとすると、やる気が違いますよね。
西村:そうそう、人に見てもらうことで会話になるし、何より褒めてもらえますし(笑)
花塚:何かで褒められたいと思ったら、陶芸を始めるといいのかもしれませんね(笑)
西村:あと、陶芸教室では1人で黙々とつくることもできますし、年代や性別が違う人たちとの交流もできますので、誰もが自分のやりたいように楽しむことができます。
生徒さんなんかを見て思いますけど、陶芸を習う人たちはみなさん、空気感がなんとなく似ていて、陶芸をとおして自然と仲良くなっている気がします。
花塚:陶芸がきっかけで新しく友達になれるのは、すごく素敵ですね。
西村:高齢になると、新しいコミュニティや出会いが、なかなかない人もいると思いますから、コミュニティのひとつとして、陶芸を始めてみるのもいいと思いますよ。
陶芸は生活を楽しく、豊かにしてくれるものですから。
- 陶房情報
- 陶芸教室江古田陶房
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西武池袋線江古田駅より徒歩4分
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お問い合わせ:03-3950-1146
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西村真一郎
陶芸教室江古田陶房 代表。武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科卒業。個人のレベルに合わせて、幅広いジャンルの技法を教えてくれる。 http://www.ekodatoubou.com/
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