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着物をデイリー使いするための5つのポイント

「洋」のアイテムをミックスさせて、カジュアルに着物を着こなす

特集 自分をあたらしくする 2020.8.14

取材・文:出口夢々

結婚式や孫の入学式など、ハレの日に出番となる着物。たまにしか着る機会がなく、普段はタンスのなかで眠っている……という人も多いのではないでしょうか。

そこで、従来のフォーマルな着物から家で洗えるカジュアル着物まで、幅広い商品の販売を行っているやまとのプレス担当・小西彩乃さんに取材。日常生活で着物を着こなすためのコツや、お手入れの方法、夏から秋口に適した着物など、5つのポイントを伺いました。ハレの日だけではもったいない! 普段の生活から着物を取り入れて、日常でも素敵な装いをまとってみては?

 

Q.日常で着れる着物の魅力は?
A.自宅の洗濯機で洗えてお手入れが簡単! シワにもなりにくい!

「もっと日常で着物を楽しんでもらいたい」「よりファッショナブルに着物を着てほしい」という想いから生まれたのが、やまとの「洗える着物」です。お手入れを簡単にするために生地の素材にポリエステルを取り入れているのですが、ポリエステルは静電気が起きやすい性質があります。そこで、やまとではオリジナルの耐久静電繊維を使った生地を使った着物を一部製作し、静電気の発生しにくい、着心地のよい着物を実現しました。また、素材をポリエステルにすることで、さまざまな模様をプリントできるので、フォーマルな着物にはない多彩な柄の着物をまとえるのも魅力です。

そして何よりもうれしいのが、お手入れの手軽さ。洗える素材の着物であれば、洗濯ネットに入れて手洗いすればOK。そもそも着物は着る度に洗う必要がないので、季節に応じて3~5回着たら洗う、くらいの頻度でお手入れすれば問題ありません。汚れやすい襟元や袖口は、うたまろ石鹸などを使って別に洗うと清潔感を保てます。

 

Q.今もっている着物を日常でカジュアルに着たい
A.「洋」の要素を取り入れてみる

ハレの日やかしこまった日以外はタンスで眠っている……という着物でも、帽子やレース羽織りを取り入れるだけでカジュアルになり、日常でもオシャレに着こなせます。帯締めをベルトで代用したり、足元を草履ではなくブーツにしたりするだけで、手軽にカジュアルさを演出できるのでおすすめです。

いきなり「洋」の要素を取り入れるのはハードルが高い……! と思う人は、半襟に好きな模様を取り入れてみましょう。帯の結び方をラフなものにしたり、着物の柄に合わせて足袋の色を選んでみてもかわいいです。

 

Q.普段から着物を着ると生活にどんな変化がある?
A.時間にゆとりが生まれ、新しい日常に出合える

着物を着ると帯板や帯などで胴体が固定されるので、物理的に背筋がしゃんと伸びます。また、帯を結んだりするのに背中のほうへ腕を回すので、それだけで運動になるんですよね(笑)。とても健康的になれると思っています。洋服ではなく、あえて手間をかけて着物を着ること自体が、自分を見つめる時間につながるとも思います。

また、普段から着慣れていないと移動ひとつをとっても時間がかかるので、時間に余裕をもって行動するようになりますよね。すると心の余裕もできて、一つひとつの所作が美しくなり、自分に自信がもてると思います。自信がもてるとポジティブな思考にもなれますしね。

歩くスピードもゆっくりになるので、歩きやすい恰好(洋服)のときには気づかなかった街の風景を捉えられ、新しい日常に出合えるのではないでしょうか。

 

そして、着物を着るという行為は、日本独自の文化を取り入れるという意味にもなりますよね。こうして自国の文化を受け入れると、周りの人たちやさまざまなことがらを肯定できるようになると考えています。すると、自ずと他国の異文化に対しても尊敬する感情が生まれるのではないでしょうか。

 

Q.真夏に適した日常づかいの着物には、どんなものがある?
A.素材が麻の着物や絞りの浴衣が涼しく着れる

着物のなかでも、夏だとやはり浴衣を着たい人も多いでしょう。総絞りの浴衣だと、着たときに肌と絞りの凹凸のあいだに風が通るので、夏でも涼しさを保てます。また、麻でつくられた着物も風通しがよく、吸水性・吸湿性に優れているので、生地が肌に密着することなく快適に過ごせます。

◆真夏に適した着物

やまと可憐(夏単衣)
やまとと東レとの取り組みで「涼しく快適に」を第一に製作した機能性繊維を用いた、やまとオリジナルアイテム。やまと可憐の夏単衣(夏着物)には、タテ糸に「セオα」という吸水性・発散性・速乾性に優れた糸が、ヨコ糸には「エアファイン」という吸水発散性に優れた糸が使用されています。仕上げに帯電防止加工を施しており、ポリエステル素材に起こりがちな静電気を気にする人にもおすすめです

 

小千谷縮
新潟県・小千谷にて作られる麻の着物です。小千谷縮の素材である「苧麻(ちょま)」は天然繊維のなかでも熱伝導率が高く、吸水性と発熱性に優れた、肌にやさしい素材。また、「シボ(=凹凸)」があることで、肌との接地面が少なくなり、さらりとした着心地が楽しめます
有松絞りのゆかた
名古屋市・有松地区で江戸時代から続く「絞り染め」という技法を使用した伝統的なゆかたです。絞りによる柄の繊細さ、ぼかし加減など、染めのニュアンスは手仕事ならではの魅力があります。綿のゆかたはシワになりやすいのですが、シボ感によりシワが気になりにくくなっています

 

Q.夏から秋口にかけて日常づかいできる着物はどんなもの?
A.木綿の単衣なら真夏以外の3シーズンで着れる

夏から秋口は、「単衣」と呼ばれる裏地のついていない着物に移行する期間。福岡県・久留米を中心とする福岡県南部筑後地方で生産される日本三大絣の1つである「久留米絣」のような「木綿の単衣」は、綿素材のため自宅でもお手入れがしやすく、真夏以外の3シーズン(春・秋・冬)に着用できるのでおすすめです。

◆夏から秋口に適した着物

久留米絣
久留米絣とは、木綿の着物で、福岡県・久留米を中心とする福岡県南部筑後地方で生産される日本三大絣の1つです(※)。木綿は吸湿性と保温性を併せ持つ性質から、裏をつけない単衣仕立てにすることで、真冬・真夏を除きロングシーズン着ることができます。昔ながらの水洗いと天日干しで仕上げたしっかりとした生地は、丈夫でこしがあるもの。縞や格子模様の多い木綿の着物のなかで、絣織りならではのデザイン性はより上品な着姿を表現してくれます。
※絣とは、糸を染める際に染まらない部分をつくり、織り上げることでさまざまな柄を表現する技法のこと

 

企業情報
株式会社やまと
1917年東京にて創業。きものでエキサイティングな世の中をつくるため、ビジョンに「KIMONO DREAM MAKERS」を掲げる。現在、「きものやまと」「KIMONO by NADESHIKO」「Y. & SONS」「DOUBLE MAISON」「THE YARD」の5ブランドを約100店舗展開している。

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