故人へ想いを伝える、葬想空間スペースアデューに泊まってみた
故人と家族の「最後の時間」を、心ゆくまでともに過ごす——
取材・文:花塚水結
写真:編集部
気になる葬儀社や終活に関する企業に潜入して、どのような企業かをレポートする連載「葬送図鑑」が始まりました!
記念すべき第1回目は、株式会社マルキメモリアル21が運営する「葬想空間スペースアデュー」。宿泊できる葬祭場であるスペースアデューに、編集部が実際に宿泊させていただきました。
また、スペースアデュー代表の白井さん、現場でお客様と関わるスタッフの鈴木さんにお話をお伺いし、スペースアデューが提供しているサービスを取材。宿泊できる葬祭場とは一体何なのか? スペースアデューを徹底リポートします。
葬想空間スペースアデューとは?
スペースアデューは、和洋4タイプの家族葬向け式場が備えられた葬祭会館です。各フロアの収容人数は10席~50席程度で、1フロア貸し切り。そのため、ほかのお客様に気を遣うことなく、故人と家族水入らずの時間が過ごせます。
本館の特徴は、なんといっても宿泊できる葬祭会館であるという点です。お通夜を終えた後は、故人と家族で同じ時間を過ごし、思い出を共有できる空間になっています。
また、葬祭会館であると同時に旅館業を取得していて、布団やベッドはもちろん、アメニティーセットやパジャマなど、宿泊に必要な備品も完備されています。
一体、なぜこのような施設をつくろうと思ったのか、スペースアデュー代表の白井さんに聞いてみることに。
家族が故人に対して想いを伝えられる「空間」の提供
花塚:一般的に、宿泊できるお葬式の式場というのは、とても珍しいですよね。
なぜ、宿泊施設を完備した葬祭会館をつくろうと思ったのでしょうか?
白井:20年以上前のことですが、当時のお葬式は大きな祭壇を設営して、多くの人を呼んで……と、規模の大きなお葬式が多かったんです。これは、日本古来のお葬式の文化であったわけですけど、当社のオーナーは「大規模なお葬式を執り行う文化はこの先長くは続かず、縮小されていき、いずれは家族中心のお葬式になる」と考えていました。
お葬式に参列する人数は減っても、提供するサービスの価値は下げたくないというのが当社の方針です。例え、家族だけのお葬式でも、きちんと見送っていただきたいと考えております。家族が故人に対して想いを伝えられる「空間」を提供しようというのが、この施設をつくる軸になりました。
当館ではフロアごとに式場のテイストがございます。このなかから、故人様に合う式場を選んでいただき、故人様らしい花祭壇やお棺などをオーダーメイドすることで、より故人様を身近に感じられるのではないでしょうか。
花塚:和洋のタイプがそろっていて、各フロアで雰囲気がまったく異なりますね。
式場のとなりにはダイニングテーブルやテレビも置かれていて、本当の家のような感じがします。
白井:そうですね。以前のお葬式は、ご自宅でお葬式を執り行う風習がありました。そのため、「寝ずの番」や「夜伽」という習慣があり、故人様と一晩をともに過ごすことによって故人様を弔ったり、心を落ち着かせる時間にしたりしていたんです。
このように、夜通し故人様と一緒にいられるような、「時間」も提供できればいいなという思いから家のようなつくりにしています。
実際に利用されるお客様は、お通夜で食事をしながら故人様との思い出話をされている方が多いですね。また、棺の隣に布団をもってきて一緒に寝られる方もいらっしゃいました。
白井:現代のお葬式は簡略化されていく一方ですが、故人様のことを思い出しながら、家族みんなで最後の時間を過ごす「本質」の部分を失ってはいけないと思います。
打ち合わせは3時間。とことんこだわるオーダーメイドのお葬式
「故人と家族の時間」を大切にするスペースアデュー。この空間では、どんなお葬式が執り行われるのでしょうか。実際の現場でお客様と関わる、スタッフの鈴木さんにお話をお伺いしました。
花塚:スペースアデューで行われるお葬式にはどのような特徴があるでしょうか?
鈴木:やはり、ご家族様が大切な故人様に想いを伝えられる「空間」づくりにこだわっています。
たとえば、お葬式の祭壇を彩るお花。一言で紫といっても、鮮やかな色か、淡い色がいいのかなど、ときにはカラーチャートや、過去施工例を写真でお見せしながら細かく決めていきます。
お花屋さんも、お葬式の祭壇を得意とするお花屋さんと、ホテルのエントランスにあるような、躍動感のある作品などを得意とするお花屋さんと、好みやイメージにあわせてタイプの異なる2社からお選びいただくことが可能です。
花塚:お葬式のお花は、決められているものだと思っていました……!
鈴木:お葬式では和花をイメージされる方もいらっしゃいますが、以前にお手伝いさせていただいた例ですと、真っ赤なバラだけの祭壇や、お別れ会の献花でダリアを希望された方もいらっしゃいましたよ。
花塚:すごいこだわり! そうした希望にも対応してもらえるのですね。
鈴木:そうですね。当社は、「お葬式はこうあるべきだ」というこじつけをしない会社だと思います。宗教儀礼の部分については、決まり事もありますが、どのプランでも、ご家族様の希望に沿ったご提案ができるようにしています。
花塚:お花以外に、こだわれるポイントはありますか?
鈴木:写真を絵画風に加工するアートキャンバスや、生演奏などの演出もご用意しています。
また、より故人様に寄り添ってお別れをしていただけるエンバーミングをおすすめしています。故人様のお体に遺体衛生保全処置を行うことで、長期のご安置も可能になります。
従来のドライアイスを使用したご安置のように、お体が凍ってしまうこともありませんので、さまざまなお衣装へのお着替えが可能です。何よりご家族様が二次感染症などの心配をせず、故人様に触れていただきたながら、お別れの時間を過ごしていただけます。
先日、担当させていただいた例では、故人様が遺言として「息子の結婚式に出たときの格好でお棺に入りたい」と遺されていらっしゃったそうで。結婚式のときの写真をお借りして、そのときのスーツ、帽子、靴も一式着用させていただきました。
花塚:家族だけでなくて、故人の希望も叶えられるなんて、素敵ですね。
こうしたお葬式のことを決めるための打ち合わせは、どのくらいの時間をかけるのでしょうか?
鈴木:最初のお打ち合わせで、短い方でも2~3時間くらいだと思います。お葬式の打ち合わせとしては長いかもしれません。
大体、2時間程度でご要望や故人様との思い出などのお話を伺いお見積りします。お見積もりを出してからさらにオプションを追加したり、削ったり……という打ち合わせをしています。
花塚:そんなに時間をかけていただけるのですね……! お葬式の打ち合わせというと、長くても1~2時間程度なのかな、と思ってしました。
鈴木:そうですね。とはいっても、打ち合わせのなかで話しているのは、ほとんどご家族の方たちです。たとえばご高齢のご夫婦ですと、旦那様が喪主を務める場合、奥様は遠慮して発言されないこともあります。喪主様になる方はもちろんですが、奥様やそのほかのご家族も「こうしたい」というビジョンをもたれていると思うので、奥様にも意見を伺ってみたり、積極的に女性目線の意見も取り入れられるよう、ある程度の誘導やご提案をさせていただくこともあります。
花塚:こだわりの空間を提供するために、打ち合わせでしっかり利用する側の意見を聞いてくれるのですね。
鈴木:はい。できるだけ、家族総出でお葬式についてお考えいただくようにしています。打ち合わせに長い時間をかけていただくだけあって、ご家族様からも希望どおりのお葬式ができたといっていただくことも多いです。ご家族様に協力していただきながら打ち合わせを行なうことで、故人様にしっかりと想いを伝えていただける空間づくりのお手伝いができるのではないかと思います。
お泊りの準備は不要!? ほしいものが完備された宿泊施設
とはいっても、「お泊り」は少し身構えてしまいませんか? あれもこれも鞄に詰めて……と、準備しなければいけないのは少し億劫になりがちですよね。
ですが、そんな不安を晴らしてくれるように、充実した備えがありました。まずはお部屋の紹介からしていきましょう!
今回、編集部が泊まらせていただいたお部屋がこちらです。
編集部が泊まらせていただいたのは、4階の「風かほる部屋」。このお部屋は18畳の和室ととても広く、窮屈な感じはありませんでした。2人で泊まったので、より広く感じました。板の間もあるので、荷物を置く場所と寝る場所が分けられます。畳の部屋だけでも8人くらいは泊まれそうです。
そして広々としたキッチンも併設されています。電子レンジ、トースター、ポットなどの家電もあるので、便利です。
洗面所はこちら! 洗面台は2つあるので、朝でも家族で順番に使用すればスムーズに準備ができます。
ドライヤーも設置されているので、持っていく必要はありません。
ただ、朝の準備でヘアアイロンを使用される方は、もっていきましょう!
アメニティとして、ボディウォッシュ用のタオル、歯ブラシ2本、ヘアブラシ、T字カミソリがあります。また、バスタオル、ハンドタオル、パジャマもそろっていますよ。
パジャマはボタン式のフリーサイズですが、高身長の女性でもゆったり着られます。
宿泊する前は、お葬式の式場が併設されているということで、近寄りがたい気持ちや、「神聖な場所に宿泊しても大丈夫かな? 怖くないかな?」という気持ちもありました。
しかし、実際に宿泊して見ると、館内は「怖い」雰囲気はなく、控えめな照明やあたたかみのある穏やかな空間だと感じました。そんな雰囲気のなか、ふかふかな布団で安心してぐっすり眠れました。
また、設備がそろっていてるので、まさに旅行に来ているような気持ちになりました。実際に利用する場合でも、お葬式で着用する喪服を鞄に詰めれば、安心して宿泊できると思います。
朝の準備はどうしても時間がかかってしまうものですが、2台の洗面台と、大きな鏡で楽に準備をすることができました。
また、部屋にはお風呂やキッチンもあるので、亡くなった家族が好きだった料理をつくって、家族一緒に食事しながら、故人との思い出話をするのもいいですね。
スペースアデューは、時間制限を気にすることなく、故人と家族の「最後の時間」を過ごすことができる空間でした。
- 企業情報
- 株式会社マルキメモリアル21
〒110-0004
東京都台東区下谷1丁目3番10号
電話:03-5246-5521
FAX:03-5246-5523
ホームページ: https://www.s-adieu.com/
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